2.反動作的反応 ページ3
2.反動作的反応
不意に、目が覚める。
知らない間に居眠りをしてしまっていたようだ。
コンタクトをつけた瞳がパサパサと乾燥してしまっている。
周りを見渡してみれば、大方の人間が揃っており、各々の仕事を始めていた。
……起こしてくれれば、よかったのに。
そう思いはしたが、どうせ起きていたところでこの仕事の山を片付けることなど不可能に近いので、黙って書類と対峙することとした。
……思った以上に頭が文章を受け付けない。
昨日はまだ文章が読めたというのに、今日はそういう日らしい。
いつもそうだ。
文字が読めない訳では無い。書けないわけでもない。
知能指数自体は人並み程度にあるのだが。
それを、行わせようとしてくれないのだ。
頭が文字を拒絶する。
指が仕事を拒絶する。
脳が思考を停止する。
その日の調子によって度合いは異なるが、今日はダメな日らしかった。
「……、どうしたA、書類と睨めっこなんかして。不備でもあったか?」
ふと、上から声が降ってくる。
国木田さんだ。
あまりに長い間、しかも鬼の形相で書類を睨みつけていたのだろう。
かなり不思議そうな顔をしてこちらを見ている。
「……いや、その。ちょっと考え事してました。……なにか御用でも?」
「いや、あまりに書類と格闘していたから誤字脱字などがあったのではと思ってな。」
「いやいや、この書類はとても素晴らしいものですから、ついつい読みすぎてしまって……!………あっ、ちょっと太宰さん何して」
しどろもどろになりながら国木田さんに言い訳をしていると不意に後ろから包帯に包まれた太宰さんの手が伸びてきて、私の書類をひょいと取った。
その腕は私よりも細いはずなのに、しっかりとした手取りで書類を眺めてから ふーん、と声を漏らした。
「ところでAちゃん、この書類なんて書いてあるの?」
「………えっ、」
「いやあ、書いてあることがいちいち難しくて理解出来なかっただけだよ。……そうだAちゃん、私とデートしよう」
そう言われ、拒否する間もなく手を取られエレベーターへと連れていかれる。
国木田さんは大声で「どこに行くつもりだ太宰!!」と叫び、いかにも怒っていますと言いたげな声色だった。
……一方の太宰さんは、意地悪そうにニヤリと笑って、ちょっとそこまで!と返しエレベーターの扉を閉めた。
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作者名:竹ノ狐。 | 作成日時:2017年3月13日 1時