【刀剣乱舞】おうちに、かえして。 (ページ14)

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13.「所詮は偽造」ページ14

その言葉を聞いた後、暫く沈黙が場を占めた。

特に近況を語り合うわけでも、晩酌の約束を交わすわけでも、挨拶をするわけでもなく。

本当に、僕の顔を見るだけでも満足なのかもしれないな。

……僕には三日月の姿など見えやしないけれど。

「なあ、Aよ。何故目元を布で隠しているのだ。そのままではなにも見えぬであろう？」

不意に沈黙が破られ、肩を踊らせる。

その質問に答えられるはずはないが、何故かを必死で考えた。

僕の姿を完全に見てしまった人間は良くも悪くも僕の虜となってしまう。

人としての力が弱ければ弱いほど、僕の強さに惹かれていく。

それを、避けるために他ならなかった。

僕の目を見なければ、誰も僕に惹かれない。

誰も、僕を恨むことなどなくなるのだ。

そうして、僕は悲しいものを見ずに済む。
こんなにも素晴らしい利益があるのだから、外す意味もない。

少なくとも、僕にとっては。

「……まあ、無理もなかろう。なあに、Aよ。鶴は未だお主の存在に気がついていない。というよりも、髪型から何まで別人のそれなのだから、致し方ないのかもしれん。……近いうちに、挨拶でもしてやってはくれぬか？」

僕の存在に、気がついていない？

それもそうだ。

髪の毛はあの男に切り捨てられた。
彼は短髪が好みだったらしい、何度も「そっちの方が似合うよ」と言われていた。

目元も覆っていて分からなければ、声すらもまともに聞かせていない始末だ。

いくら片割れだからといって、気が付けるはずがないだろうな。

……少しだけ、悲しいが。

「久しぶりにこうして会えたわけだ、古備前の奴らや織田の奴ら、源氏の奴らも話をしたがっていたか。すぐにとは言わんが、声をかけられた時には突き放さず話だけでも聞いてやってくれ。」

「……ぅん…。」

やっと絞り出すようにして出した声は、布で濾されたように掠れきっていた。

古備前、同じ時代の太刀だったか。
赤と緑の、まるでぼく達のように正反対の奴らだった覚えがある。

織田は、兄様と共に過ごした数少ない仲間のうちだ。
長谷部に対して怖じ気立たずに居られるかはわからないが、挨拶だけでもしたいものだ。

源氏は、その昔に世話になっていた。
永らく仕舞われていた装飾刀だったが、覚えてもらっていたのか。

僕のかすれた声を聞いた三日月は、満足そうにただただ頷いているだけだった。