12.「代用品」 ページ13
「………、へし切長谷部だ。」
あの雰囲気は間違えなく、長谷部そのものだ。
……この本丸には、彼もいるのか。
食事のときには感じられなかったあの空気が、身体中を這い蹲ってなかなか離れない。
「主命とあらば。」
僕にばかり構っていく主に絶望し、いつしか棘が増えていった彼も、いわばこの「事案」の被害者だ。
そうして、僕はその被害者でもあり、「加害者」でもある。
だのに、被害者面することも、加害者面をすることも許されない。
そう、政府の者たちは僕に「忘れろ」とだけ言う。
ここの本丸の者たちも、僕の身にあったことについて僕から聞こうとは決してしない。
それじゃあダメだというのに。
このままでは、どこか違う世界の人間たちが、同じことを、同じ思いを、繰り返してしまうというのに。
「………、ぁ、」
薄暗い光が布にあたるだけの閉め切った部屋で声を上げようと口を開けたが、出てくるのは小さな吐息だけ。
あの本丸から連れ出されて半月、不具合が何かと多いのだ。
まず、頭が満足に働かないこと。
僕の中に蔓延る「狂気」にも関係はあるのだろうが、自分自身の意識の中で考え事のできる範囲が狭まったのだ。
まるで、何も考えるなと言われているように。
そしてもうひとつが、声が上手く出せないこと。
喋ろうとしても、まるで声帯が震えてくれない。
そうして意味のもたない吐息だけが漏れていき、口許だけがあぐあぐと言の葉のとおりに動かされるのだ。
皆、何故かこちらの言いたいことを理解してくれるようだが、差し詰め読唇術でも使えるのだろう。
彼らは、戦士なのだから。
「……A、少しよいか」
不意に、「僕の部屋」と仮に充てられている部屋の襖が開く音と、三日月と思しき人物の声が同時に聞こえた。
なんでだろうか、とても嬉しいはずなのに、とてもかなしい。
「………ぁ、？」
「ああ、無理に喋らんでいい。なに、じじいが勝手に遊びに来ただけのことさ。」
ははは、とゆるやかに笑い、僕に近づいてきた。
怖くはない、むしろ喜ぶべきなのに、何故か僕の手は三日月を振り払うために出た。
ぱしん、と布に当たる音が聞こえ、少しだけ距離を置いてしまった。
「……ああ、隣で話すには ちと早すぎたか。……なあに、案ずるでない。俺はこうしてお前の顔を見れるだけでも幸せだ。」
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名無し - これを書いてないで、おそ松さんのを更新してください。お願いします。ほんとに楽しみなんです。お願いします。 (2019年10月12日 17時) (
レス) id: 01d7da7a06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：竹ノ狐。 | 作成日時：2016年7月4日 0時
