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第一話 ページ3

それは、月明かりの綺麗な夜だった。バルバット王国の裏路地の奥。

そこでは週に一度、裕福な層の人間が気晴らしに訪れる見世物小屋があった。
大抵は残忍な見世物や、珍しい生き物の披露である。

そして、今日の見世物は、両方だった。

「ご覧下さい!この薄汚きこの子供たちが、異形の獣に食い殺される余興を、
 お楽しみください!」

支配人がそういうと共に、奥から鎖で拘束された男女の子供たちが引き出される。
そして、支配人は片手に古い書物を持っていた。

そのまま、高さのある頑丈な檻に乱暴に放り込む。周りの金持ちの観客は今にも起こる
惨劇に胸を高鳴らせていた。

「ひっ!」

「いやああ!」

暗闇の奥から、のそのそと獣たちが出てくる。餌の匂いを嗅ぎ付けたのだろう。
異形の巨大な獣。それを見た子供からは悲鳴が、観客からは歓声が上がった。

そして今にも、獣が襲いかかろうとした、その瞬間。

「――――『万物の血統の書』」

三メートルは軽く超える檻を、まるで高飛びのように軽々と飛び越えて中に降り立った者がいた。
子供と獣を隔てるように降り立つと同時に、剣を突き立て鎖を断ち切った。

「なっ・・・」

「と、飛んだ!?これを!?」

それは、青年だった。立ち上がると、地面に突き刺さった剣を抜いて剣術の構えを取った。
尋常ではない殺気を放ち、周りを睨めつける。

そして檻の上に優雅に降り立つ、少女。異国の服と輝く金糸の髪が風になびいている。
水晶の杖がシャラと音を立てた。

「どのような血統を交配させればいいのか、その特徴を網羅した幻の書物。
 でも君は選ばれていないから読みこなせていないよ。だから、返して」

「渡したほうが身のためだぜ、おっさん」

「何!?」

観客は我先にと逃げ出し、支配人は奥から残りの獣を引き出して、彼らを襲わせた。
だが二人は焦らず、少女がよどみなく呟いた。

「狂気と幻想の精霊よ、汝と汝の眷属に命ず。我が魔力を糧として我が意思に大いなる力を
 与えよ。出でよ、フラウロス」

「は!」

彼らが剣を振るうたびに、血しぶきが飛び、炎が燃え盛る。まるで舞っているかのような美しい
動きと剣さばきだった。

「・・・ひいい!」

支配人は腰を抜かし無様に逃げ出した。

「口ほどにもないですね」

「所詮、その程度の覚悟しかなかったんだろうね」

ぽつんと残された本を拾い上げて、抱きしめると、少女はぽつりと言った。


「世界には、知るべきでないことがあるのに」

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設定タグ:マギ , バビロン , ダンタリアンの書架   
作品ジャンル:アニメ
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(プロフ) - 面白いです! (2015年5月3日 10時) (レス) id: 152395002b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:セツナ | 作成日時:2013年4月6日 23時

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