┣ 第5話 ページ6
誕生日の数字を入れてみるが、南京錠は外れる様子がない。
何故外れないのか。もしかして他にも誕生日が書いてあるのを見落としたのか。
「……あ、お客様。
もしかして英語が逆から書いてあるということは、数字も逆になるのでは？」
阿鳥さんの閃き力、凄い。
今までにもたくさんのお客さんの部屋を調べる手伝いをしてきたからだろうか。
「入れてみます。えーと4、1、2、0……おっ」
ｶﾁｬｯと音を立てて南京錠が外れた。
クローゼットを開けると、阿鳥さんが「え」と小さく声を漏らす。
それを不思議に思いながらも中を見ると、そこにはスーツのような制服が一着かけられていた。
「この服、何だろう……あ」
制服を調べると、胸ポケットから名札代わりのピンバッジとパスポートが手に入る。
「えーっと、まず名札の方は……HAMILTON HOTEL、篠宮……？」
これが私の苗字なのだろうか。そしてこのハミルトンホテルというのが職場なのか。
これだけではまだ何も思い出せない。
しかし手元にはパスポートがある。
パスポートを開き自分事項のページを探す。
「あった。
……篠宮、A、これが私の名前……」
そう呟くと、顔が熱くなるような感覚。
「阿鳥さん。私、篠宮Aっていうらしいで…………ッ！？」
その瞬間、頭の中に走馬灯のようにたくさんの情報が流れ込んできた。
映像やら音声やら情報量が多く、私は頭を抱えて倒れ込んでしまった。
「Aちゃ……お客様！？」
頭の中をたくさんの情報が駆け巡る。
阿鳥って、
聞いたことある、呼んだこともある、
なんでだっけ
そうだ。
思い出した。
私はハミルトンホテルで働いていて、
26歳で、
職場には仲が良い同僚がいて、
大好きな人で、
その人の名前が、
、
.
少しすると情報の波も頭痛も治まった。
「お客様、大丈夫ですか？」
ゆっくりと起き上がり、改めて目の前の声をかけてくれた人の顔を見る。
「はると、くん」
思い出した、目の前の人。
私の大好きな人。
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作者名：空気 | 作成日時：2021年6月3日 16時
