【おそ松さん】お前らがいる限り、元には戻れない。２

49話。 ページ20

「またかしら。」と
髪を二つに結いた彼女はそう言った。

寝ている彼女の顔を見る。
汗が凄く出て来ている。

トト子はあれから毎日のように
沙織ちゃんの見舞いに来ていた。


｢一体、どんな夢を見てる…？沙織ちゃん。」


またベットも上でもがく彼女を見た。
何度見ても苦しそうだ。

記憶を失ってからの沙織ちゃんの雰囲気はあまりにも違っていて、おとなしいと言うか、【別人】がなりすましている様なそんな感じ。


病院に駆けつけた日。
沙織ちゃんの発したあの言葉が僅かに胸元で突っかかってた。


『【私って誰？貴女って誰？】』


その後、私がいくら話しかけても怯え、怖いものを見たような顔をし、トト子を見ていた。

あれからまともに会話をしたことは一度とあっただろうか。私だけでなく、他の皆にもだそう。


その時、皆は確信した。
もう私達の知っている彼女じゃない、と。


無性に涙が頬を伝った。
いくら両手で顔をおおっても流れてくる涙に、初めて違和感を覚えたのを覚えている。


彼女が眠っている時間に、毎日、お見舞いに来ようと皆で、大事な約束を交わした。



「あ……いけない、いけない…。」

自分の脆くなった涙線に恥ずかしくなる。


いつになったら、
あの輝かしい瞳を向けてくれるの？

いつになったら、
あの笑顔を見せてくれるの？


「いつになったら…。」


この言葉を言うと悲惨な現実を忘れられる気がするから、今日も口にした。





「そう言えば、沙織ちゃんの好きな色の花。
一緒に飾っておくわね…。じゃあまた明日ね。」


持参した朱色の花を飾られていた花瓶に入れる。

一本を除いて、まだピンピンとしている花達は、見ているだけでどこか懐かしい気持ちを甦らせる。


「先生がお呼びです。」と看護師が言った。
「今行きます。」とだけ答えると私は部屋を出た。

先生は真剣な眼差しで話し始めた。
失った記憶は身内や友人などの人達の情報のみ。

友人などの記憶が無いため、誰も人との接し方も忘れてしまったと言った方が分かるだろうか。



悪夢や性格の変わりようはまだ何一つとして分からないが、一つ言えることがある。


それは強い記憶に関する衝撃や感情、記憶を失う前何が起きたかを彼女自身が思い出さなければ、














【二度と、記憶が戻ることは無い】と言う事を。

続く  (更新停止中) お気に入り登録で更新通知を受け取ろう

←48話。

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す