【おそ松さん】お前らがいる限り、元には戻れない。２

44話。 ページ14

目が覚めると、
私は仰向けで何も無い白の世界にいた。

あの一瞬の間で何が起こったのか、
分かるのは痛みがすること。

すると、私の脳裏に鮮明に蘇ってきた。


「痛い痛い痛い…なんで？｣


なんで、体が動かないの？

「涙を流したい」と心が強く願っても、
体が言う事を聞かない。

まるで体はこの世のものじゃ無いみたい。


あの一瞬で、私は確かに見た。


周囲の驚いた顔。
そして、誰かの微笑んだ顔。

私は知っている。
赤の他人とは思えない顔付き…。


血の気が引いたのを全身で確認できた。
嘘だと言って欲しかった。



どうして、…笑っていたの？


どうして、…私を押したの？














ねぇ、何でよ。

……片桐さん。



黒のパーカーを羽織った細身の姿から見えた顔。
あの顔に何度助けられたかも分からなかったのに。



私が貴女に何をしたって言うの…。



悲しみと少しの憎悪が私の中で湧き上がる。

血が舞う中、私が微かに感じたものは
【絶望感】しかなかった。


彼女の達成感に満ちていた瞳。
何処と無く昔見た気がした。


記憶に浸っても、
私の思考が追いつかないことは変わらなかった。





「もう理由がわかんないよ！！」

私はそう強く叫んだが、声が出なかった。



「じゃあ、そのまま死んじゃえば？」
「…だ、誰？」


私の思考に勝手に入り込んできた相手は、
容姿が私にそっくりだった。

ただ、雰囲気が違って見える。



「この世界が嫌だから、そんな事が言えるんでしょ？だったら、さっさと手放せば？｣

「違う！！」

「ほんとに〜？昔から嘘つきだよね、貴女。
違うしか言えないの？」


魔女は、私の想いなんて御構い無しに話し続ける。


「辛いんでしょ？友達失っちゃったもんね？
家族も失っちゃったもんね？」

「やめて…。」


投げ掛けてくる言葉が心の深く奥まで突き刺さる。
確かにこの女の言葉に嘘はない無い。

しかし、私の口から出て来る言葉は嘘ばかり。


「だったらさ、苦しまない世界に行こうよ。」
「そんな所、何処にもない……あ、。」

本音が漏れてしまい、私はとっさに口を閉じた。

「ふふっ。｣

そう笑ったこの女は、私にこう言った。








「現実じゃ無いよ〜。
この世界こそ、その世界だよ？」

「え、。」


瞳に吸い込まれるとはこういうことか。
私は酷く重たい瞼を嫌でも閉じざるを得なかった。







「ようこそ、苦しまない世界へ。【私】。」

45話。→←43話。

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す