【おそ松さん】お前らがいる限り、元には戻れない。２

33話。 ページ2

今日は大事な新曲のテレビ初公開。
私は深く息を吸って緊張をほぐしていた。


ナレーションの声が響き渡った。


「続いては初登場、Saoriのライブです！」


真上にあったライトの光が私の方に降り注ぐ。



「皆さん、こんばんは〜！
今回は新曲を歌わせてもらいます。

楽しんでいって下さい！

それでは聞いてください。」




ステージ周辺は静寂とした空気に変わり、
同じように切なげな音楽が流れる。


激しくもなく、悲しすぎてもいない
何とも例えられない歌は、まるで
沙織のために作られたように合っていた。



この想いを伝えたい人に
伝わってくれれば良いのに。







「本当に、昔から馬鹿げてるわね。
まだ終わってなんかないわよ？」

伝わってくれれば、ね。







初公開ライブは観客席にいる暖かいファンによる
素敵な声援と拍手で無事終了した。




私は楽屋へと向かった。
足取りが重たいのはメドレーだったせいだろう。



「沙織、お疲れ様〜。」

「んもう。片桐さんどこ行ってたんですかー。
私がきつくても頑張っていた時に〜！

本当にメドレーはきついよー！」

「それだけで、なまってちゃ駄目でしょ〜。」
「うー！」

私は片桐さんにお前は牛かと怒られた。



仕方ないでしょ。
最近、ライブなんてやっていなかったんだもの。

と思いながらも、
私はまだ「うーうー」と言っていた。




「Saoriさん。お疲れ様でーす。」
「お先に失礼しますね。」


本日の仕事は初公開ライブ以外はあまりなかった。
なので、早めに切り上げて良いことになった。


「こんな事滅多にないからね〜。ラッキー！」

浮かれていた私は、鼻歌を歌いながら
モチベーションを上げ、帰宅していった。




はずだったのに。





「何だ？此奴、汚な。」

少し小耳に入った言葉がそれだ。
聞こえてきたのは、薄暗い路地裏。


嫌な予感しかしなかった。


あの時のように気になった私は、
遠くから路地裏の中を見た。



「あれは…！！」


察しはしていたが、やはりガラが悪い輩の集団が、
うじゃうじゃいるではないか。

それと集団で何かを囲んでいるみたいだった。



「ねぇ。何してるのかな？」
「あ"？なんだよ、そこの女、なんか用か？
生憎、俺ら忙しいんだけど。」



ブチッと私の中の何かが切れた音がした。


「イライラする。いい加減にしなさい！」

私は耳が良いんだよね。


遠くからでも、













猫の小さな鳴き声くらい、ちゃんと聞こえるの。

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