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31話。 ページ32

時はこんなに早く過ぎてゆくものなのか。
部屋も今ではもう物がほとんど無い。


「お疲れ様、私。」
と、私は自分に呟いた。

窓から見える景色が寂しく見える気がする。
現実から逃げるみたいで胸のつっかえが取れない。

「ははっ…。」

嬉しいのか、そうではないのか
曖昧な気持ちでため息をついた。


「沙織〜。早くしなさい!もう行くわよ。」

玄関にいる母の声が元自分の部屋まで響いた。


「はーい。今行きます。」

今日は、この赤塚を【去る】日だ。
恵美と誠にはこのことは伝え済みだ。

ただ。


「『またね』くらい言いたかったのにな…。」

複雑な気持ちを晒しながら、私は車に乗った。

いつもの景色が徐々に遠ざかって行く瞬間が、
私の忘れられない思い出となるとは知らずに。




トト子達だけ、空気が違うように思えた。
いつものように教室は騒がしいというのに。

F6が久々に教室にいるからだろうか。
それとも…。


「ホームルームの前に、一つだけ連絡だ。」

険しい顔で先生が言葉を口ずさんだ。



「沙織さんが今朝、引っ越した。
親の都合上、遠い方にな。」



「え…。」
「うそ…だよね?」

本当に一瞬の出来事で
周りが歪んだようにも見える。



「雑菌が排除されましたね!良かった良かった。」
「それな!」

クラスの過半数の人間が笑い、微笑みをかわす。


「貴方達のせいでしょ…。」
「は?」

トト子ちゃんの一言が教室に響き渡った。


「あんたらのせいだってんのよ!!
事情もあの子の気持ちも分からないくせに!!」

空気はまた悪い方向に進んでいった。



「分からない?分かりたくもないな。
俺らのせいとかとばっちりに過ぎないぜ?」

トト子ちゃんの目の前で学園の生徒が叫んだ。


「逃げただけだろ?


弱虫が!」

「あんたねっ…!」

トト子ちゃんが一発かましてやろうと拳を出すと
誰かが先に生徒に手を出していた。


「痛っ…。何で…【おそ松】さん。」

「あー、馬鹿馬鹿しい。
やっぱ俺はこっちの方が性に合ってるかもな。」

おそ松は制服のネクタイを緩めた。


「お前ら〜。アイドルごっこはもうお終いだ。」
「に、兄さん?」

トト子ちゃんはおそ松の頬を強く叩いた。


「昔から馬鹿ね。弱虫。」

トト子ちゃんはそう一言言うと教室を後にした。
十四松はその跡を追った。








「思い出さないで、お前は離れるのかよ…。」
握った拳が赤くなっていた。


私達の花の学園生活はここで終止符をついた。

素敵な読者の方に感謝を込めて。→←30話。



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鬼夜狐(プロフ) - あけおめーです(*^^*ゞ今年も更新頑張って下さい(*´∇`*) (2017年1月1日 11時) (レス) id: 4f432e9546 (このIDを非表示/違反報告)
鬼夜狐(プロフ) - A.I.O.M.S.Nさん» 作者さんですよ?(o^−^o)あっ更新頑張ってね! (2016年12月31日 1時) (レス) id: 4f432e9546 (このIDを非表示/違反報告)
鬼夜狐(プロフ) - A.I.O.M.S.Nさん» 反応が可愛い(*´∇`*) (2016年12月31日 1時) (レス) id: 4f432e9546 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーと - この作品とても面白いです!!羨ましいくらi(((これからも応援してます! (2016年12月31日 1時) (レス) id: 83489bd204 (このIDを非表示/違反報告)
ほにょか(プロフ) - 面白いっす!!更新頑張ってくださいね! (2016年12月27日 17時) (レス) id: 4f432e9546 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:依愛(いあ)@あるぷすいちまんじゃく。 | 作成日時:2016年9月28日 23時

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