執着の氷華２【ブルーロック】

８９.行方を捜して ページ43

-Kunigami side-











「千切、A見つけたか？」

「いや、こっちには居なかった。國神も見てないんだな」

「ああ……潔達も探してるけど、まだ誰も見つけてねぇらしい」


食堂で逃げ出したAを探す為、俺達は手分けして青い監獄(ブルーロック)内を探し回っていた。
だけど何処を探してもAの姿は見つからず、時間だけが経過して行く。
こうしている間にも、俺の中の焦りが募って行った。
少し離れただけでAの事ばかり考えて、何か危険な目に遭ってないかとか、誰かに手出されてないかとか考えて、不安ばかりが俺を蝕む。


それに何より―――











「て言うか、兄妹が居たんだな、A」


千切が、ポツリと呟く。
そうか……俺と潔はAから話を聞いてたから知っていたけど、千切は知らなかったのか。


「そうみてぇだな」

「國神は知ってたのか？」

「……ああ、前に１度だけ聞いた事があるからな。潔も一緒に」


千切の言葉に頷いて、肯定した。
『へぇ……』と声を零した千切は少し無言になった後、何処か言い難そうに言葉を濁す。


「あの時のA……何て言うか、変じゃなかったか？」

「変？」

「兄妹に会ったら、普通もっと喜ぶだろ？でもAは、そう言うのじゃなくて……泣きそうな顔してた」


眉を顰めて言う千切に、俺は目を開く。


それは俺も気付いていたし、てっきり喜ぶものだと思っていた。
でも思い返せば、『今は兄さんに会う事が出来ない』って言ってたな。
どうして会う事が出来ないのか、あの時Aが何を考えていたのか、俺は分からないままだ。


こう思うと、俺はAの事を何１つ知らないんだな。











その時―――コツコツ、と誰かの足音が聞こえた。


「……！！Aっ」


ふと視線を移すと、廊下の奥から歩いて来るAの姿が目に映った。
それに気付いた瞬間、俺と千切は駆け足でAの元へ向かう。


『あ、國神君、千切君……』

「何処に居たんだ、ずっと探してたんだぞっ」


虚ろな目で、俺達を見るA。
口元に手を添えて、俺達を静かに見つめるAが何を考えているのか分からない。


『ごめんね……心配掛けて』

「いや、それは構わねぇけど、一体何があったん……」











全てを言い終える前に、俺は言葉を無くしてしまった。
あるものを見つけてしまったからだ。


ボディスーツで隠されているから気付き難いが、Aの首元には紅く咲く接吻跡が刻まれていた。

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