206.確かめずにはいられない ページ6
「あなたにも大切な人がいるなら
きっとその人はあなたを失った時に
私と同じようになるわよって…。
酷いでしょう?最低なことを言ってしまいました。
それでも煉獄様は私に優しく微笑んで、
新太郎が心配するから身体を大事にしなさいとだけ
声をかけてくれたのです。」
私は胸がぎゅっと苦しくなるのを感じた。
「…正気でいられなかったんです。
心の底から夫を愛していましたから…。
1年かかって、ようやく受け入れられるようになりました。
情け無いです。」
「…そんなことないですよ。」
「だから、この風呂敷も返すのが遅くなってしまって…。
本当は煉獄様に直接謝ってお返ししたいのですが、
実は明日から生家へと戻ることになってしまいました。
遠方なので、もう会うことも難しいかもしれません。」
私はかえさんの手をそっと握る。
「かえさんの思い、私が必ず杏寿郎さんに伝えます。
お話ししてくださってありがとうございます。」
かえさんはぽろぽろと涙をこぼして
「…ありがとう。
私ね、夫は亡くなってしまったけど、
生前より近くにいるような気がするの。
私の肩に蝶が止まった時、
風が私の裾を揺らす時、
夫が私の元に遊びに来ているような気がするのですよ。
ふふっ。おかしいでしょう?」
と、悲しそうに笑った。
「おかしくなんてないです。
新太郎さんはかえさんのそばにいますよ。
愛するあなたの笑顔が見たくて、笑っていてほしくて、
姿形を変えて、きっとそばにいます。」
かえさんは涙を流しながら顔いっぱいに笑う。
「ありがとう。あなたに会えて良かったわ。」
彼女はそう言うと、笑顔で煉獄家を去っていった。
1年前の遠方の任務のあの日。
あの日を境に杏寿郎さんは様子がおかしかった。
ねえ、杏寿郎さん、
かえさんの話が本当ならば、
私はあなたの気持ちを確かめずには…
いられない。
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狐姫(プロフ) - sayaさん» sayaさん、ご感想をありがとうございます!一気読み嬉しいです〜!勿体無いお言葉まで…感謝の気持ちでいっぱいです。。ぜひ、他の作品でもお待ちしておりますね!最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。 (10月20日 19時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
saya(プロフ) - はじめまして!キュンキュンしたり、切なくなったり、ホワホワしたり、で一気読みしてしまいました。とまりませんでした。このお話と出会えてよかったです。他の作品もこれから読まさせて頂きます!! (10月19日 23時) (レス) id: 7154e48ffe (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - もにょさん» もにょさん、最後までお読みいただき、そしてコメントをしてくださり、ありがとうございます!最高な作品だなんて…幸甚の至りです!またいつでもお越しくださいね。 (2023年5月6日 8時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
もにょ - ハンカチがびっしゃびしゃになる程泣きました。甘く切なく幸せな夢をありがとうございました。最高な作品に出会えて幸せです。長編お疲れ様でした! (2023年5月6日 4時) (レス) @page48 id: c62f6d1e54 (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - 桜月夜さん» 桜月夜さん、感想ありがとうございます!感動してくださるなんて光栄です!素敵なお言葉までありがとうございます(*˙˘˙*) (2021年11月19日 17時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume
作成日時:2021年11月5日 19時