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207.心を走らせる ページ7

昼餉を終えた私は、


 洗濯物を畳み、千寿郎くんに声をかける。


「千寿郎くん、夕方少し出かけますね。」


 千寿郎くんは目を丸くしたが、

 すぐに落ち着いた顔になって

「分かりました。お気をつけて。」

 と、微笑んでくれた。
 


 私は自室で支度を始める。

 縦縞の白と薄緑の地に丸い赤椿の柄の浴衣に袖を通し、

 髪をまとめて簪をさして、薄紅色の紅をひいた。


 家を出る頃には日が傾いて薄暗くなっていた。





 かえさんと話をしたら、


 今日は一人でもいいから、花火を見たい気分になった。



 杏寿郎さんは今日は任務だと千寿郎くんが言っていたから、

 気持ちを確かめるのは次に会った時にしよう。




 煉獄家を出て道を歩き始める。


 カラン、コロン、と下駄を鳴らして

 私はゆっくりと足を進める。


 歩いている途中で、


 ヒュー


 ドン


 っと、音を立てて花火が上がり始めた。




 誰もいない土手にたどり着くと、私は足を止めた。



「本当に、穴場だなあ…。」



 紺色の空に高く高く上がる


 カラフルな花火を見上げて小さく呟いた。



 パッと開いては



 名残惜しげに消えていく光から目が離せない。




「…綺麗。」







「とても綺麗ですね。」







 花火の音で足音が聞こえず、

 さらには空を見上げていたため、

 隣に人が来たことに全く気がつかなかった私は、

 おもむろに右側に顔を向ける。




 そこにいたのは、

 一緒に花火を見たいと思った相手だった。




「…杏寿郎さん!?」

「…A!?」



 私たちはお互いに見合って驚く。



「…杏寿郎さん、今日は任務だったのでは!?」


「君の方こそ、なぜここにいるんだ!?」




 よく見ると杏寿郎さんは隊服姿だった。

 任務がえりなのだろう。




「たった今、任務が終わったところなんだ。」



「…そうでしたか。お勤めご苦労様でした。」



「…それで、君は?」



 私は微笑んで杏寿郎さんに告ぐ。



「花火を…見たかったからです。」
 

「俺も花火を…見たかったんだ。」






 心臓を打つような花火の音が私の心を走らせる。



「…杏寿郎さん。」


「…ん?」


「今日、小野寺さんの奥様がいらっしゃいました。」



 杏寿郎さんは眉を上げて驚いた表情をした。



「…そうか。」




「風呂敷をお返ししますとのことで、


 私がお預かりしています。




 それから…」








 

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設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - sayaさん» sayaさん、ご感想をありがとうございます!一気読み嬉しいです〜!勿体無いお言葉まで…感謝の気持ちでいっぱいです。。ぜひ、他の作品でもお待ちしておりますね!最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。 (10月20日 19時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
saya(プロフ) - はじめまして!キュンキュンしたり、切なくなったり、ホワホワしたり、で一気読みしてしまいました。とまりませんでした。このお話と出会えてよかったです。他の作品もこれから読まさせて頂きます!! (10月19日 23時) (レス) id: 7154e48ffe (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - もにょさん» もにょさん、最後までお読みいただき、そしてコメントをしてくださり、ありがとうございます!最高な作品だなんて…幸甚の至りです!またいつでもお越しくださいね。 (5月6日 8時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
もにょ - ハンカチがびっしゃびしゃになる程泣きました。甘く切なく幸せな夢をありがとうございました。最高な作品に出会えて幸せです。長編お疲れ様でした! (5月6日 4時) (レス) @page48 id: c62f6d1e54 (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - 桜月夜さん» 桜月夜さん、感想ありがとうございます!感動してくださるなんて光栄です!素敵なお言葉までありがとうございます(*˙˘˙*) (2021年11月19日 17時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2021年11月5日 19時

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