九十二話 異形の鬼なる者 ページ13
斬り捨てた鬼二体とは比べ物にならない程の巨体に、無数の手が張り付いている。
緑の体をしたその鬼は、まさしく"異形"の鬼。
_____助けに行けるか?助けに行けば生きて帰れるか?
葛藤が、炭治郎の頭を巡る。
あの鬼はまさしく、異様。
見た事もない強さを持っていると、本能が警告を鳴らしている。
捕まった志願者の一人が無数の手に捕まれ、大口を開けた鬼の上へと垂らされている。
あのまま手を離されたら、間違いなく喰われる。
_____目の前で、生きている人が亡くなる。
"また"、喰われる。
_____怯むな、俺はもう無力じゃない。助けろ。
「_____水の呼吸 弐の型 水車ッ!!」
気がつけば、己の刀は鬼の手を斬り落としていた。
掴まれていた少年は地へと落ち、担いで距離を取った。
完全に怯えきっているが、しかしそれでも生きている事にホッと胸を撫で下ろす。
だが、炭治郎とて無感情では無い。
「あぁ……?」
人間の何倍もの大きさである鬼を前にして、恐怖心が無くなるわけもなく。
刀がカタカタと震えるのを抑える事に集中している始末。
………生きて、帰るんだ。Aさんが助けてくれると甘ったれるな。
他人に任せて勝ち取った勝利など、勝利ではない、そう炭治郎は言い聞かせて切っ先を鬼へと向ける。
ふぅーッ……と息を吐き、構えた炭治郎に。
「また来たなぁ、俺の可愛い狐が……!」
_____だが鬼は向かってくる事なくそう言った。
「っ?どういう事だ!」
可愛い狐、そして、"また"。
明らかに、この面を知っている口調に。
「狐小僧……今は"明治"何年だ…?」
だが炭治郎の問いには答えず、鬼は"明治何年"かと聞いた。
______その問いに、炭治郎は眉を潜めて。
「……今は大正四年だが」
何故、そんな事を聞くのか。
「大正………?」
_____あぁそうか。鬼は捕らえられるから今が何年かわからな_____
だが、炭治郎の思考はそこで途切れた。
別に、鬼が彼を殺しにかかったわけでもなく、命に害はない。
…………だが。
「アアアァァァァアッッ!!!年号がァ!!年号がまた変わっているゥッ!!」
「なっ!?」
鬼が、自らの手で自身を切り裂くように引っ掻いている。
痛みはあるだろうに、だが彼にはそれ以上の"感情"によって動かされているようだった。
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極暇人(プロフ) - いえいさん» コメントありがとうございます!天才だなんて恐れ多い……!とても嬉しいです!これからもよろしくお願いします! (2020年2月1日 6時) (レス) id: d0beec2789 (このIDを非表示/違反報告)
いえい - やっぱめちゃくちゃ面白いです!主さん天才!(^o^)更新頑張って下さい! (2020年1月31日 20時) (レス) id: 482fd09204 (このIDを非表示/違反報告)
極暇人(プロフ) - 雨鷽さん» コメントありがとうございます!応援コメントは糧になりますので、本当にありがとうございます!これからもよろしくお願いします! (2020年1月22日 18時) (レス) id: d0beec2789 (このIDを非表示/違反報告)
雨鷽 - とても面白かったです!新しく更新されていたところを毎日見てますwこれからも更新頑張ってください! (2020年1月22日 18時) (レス) id: 7a91fc9f4d (このIDを非表示/違反報告)
極暇人(プロフ) - 大木さん» コメントありがとうございます!よくよく考えればそうですね、すいません……訂正しておきます。これからも宜しくお願いします! (2020年1月17日 13時) (レス) id: d0beec2789 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:極暇人 | 作成日時:2020年1月14日 20時