百一話 殺意を抑える者 ページ22
「……ほら、行くぞ我妻」
ん、と無表情で手を差し出したAに、善逸。
「え………あ、ありがとう…ございます……」
恐る恐る手を取り、ぐっと引き寄せられる。
あくまで立ち上がらせる為のものだったが、それが恐ろしく優しいもので、善逸は聞こえる音との矛盾に目を丸くさせた。
_____一方、炭治郎。
「(あのAさんが舌打ち………!?それに、何の匂いもしなかったのに、今は殺意の匂いが凄いっ………のに、優しい匂いも混じってる……っ)」
顔をひきつらせて、Aと善逸の様子を見ていた。
何やら、とても複雑な匂いだ。
優しさ、怒り、殺意、憎悪、慈しみ…………
それらの音が、全て混ざったような匂い。
_____矛盾しているのに、まかり通っている。
「……なぁ、ちょっと質問していいか」
スタスタと善逸を連れて、双子の元へと歩いたA。
無表情のまま、一つ問うた。
「これと同じ刀って打てる奴いるか?」
シュ、と光の粒子を置いて、彼の右手に刀が握られる。
は、と世紀末君が息を飲む音が聞こえた。
「同じ物を打つのは不可能でございます」
淡々と答えを述べる双子の一人。黒髪の子は表情を変えずに。
けれども、A。
「だが写しはある……だろ?オリジナルじゃなく、オリジナルに鍛冶屋のアレンジを加えた傑作の写しなら」
ずい、と刀を差し出して、言った。
同じものを作るなんて、不可能。
当たり前だ、だからこそ刀は"写し"と呼ばれる個体が存在するのだからと。
「写し、でございますか。多少の違いはあれど、似たものであれば打てるかと」
「それでいい。これとほぼ同じ写しが欲しいだけだからな」
そう、左手でAの近くにあった玉鋼を掴み、刀と共に黒髪の子に預けようと、その時にAは。
「"男の約束"だ。頑張れよ、少年」
刀を黒髪の子へ、玉鋼を白髪の子へと託したA。
空いた手で、黒髪の子の頭をポンポンと撫でてそう言った。
え?という間も無く、炭治郎の方へ振り返って。
「炭治郎。__________後はよろしくな」
____ようやく見せた彼の笑み。
だが、それはいつもの彼ではなく、儚く笑う"何処かの彼"であった。
はい、と返事をするまもなく、光る魔法陣を展開して。
_____Aは、空間を跳躍した。
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極暇人(プロフ) - いえいさん» コメントありがとうございます!天才だなんて恐れ多い……!とても嬉しいです!これからもよろしくお願いします! (2020年2月1日 6時) (レス) id: d0beec2789 (このIDを非表示/違反報告)
いえい - やっぱめちゃくちゃ面白いです!主さん天才!(^o^)更新頑張って下さい! (2020年1月31日 20時) (レス) id: 482fd09204 (このIDを非表示/違反報告)
極暇人(プロフ) - 雨鷽さん» コメントありがとうございます!応援コメントは糧になりますので、本当にありがとうございます!これからもよろしくお願いします! (2020年1月22日 18時) (レス) id: d0beec2789 (このIDを非表示/違反報告)
雨鷽 - とても面白かったです!新しく更新されていたところを毎日見てますwこれからも更新頑張ってください! (2020年1月22日 18時) (レス) id: 7a91fc9f4d (このIDを非表示/違反報告)
極暇人(プロフ) - 大木さん» コメントありがとうございます!よくよく考えればそうですね、すいません……訂正しておきます。これからも宜しくお願いします! (2020年1月17日 13時) (レス) id: d0beec2789 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:極暇人 | 作成日時:2020年1月14日 20時