名もなき花に水を【夏油傑】 (ページ8)

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《緊急!1級もしくは特級レベルの呪霊確認!》

雨上がりの夕方

一本の速報が事務所内に響いた。

うわぁ嫌なタイミングで来たな。

退勤時間を前にして
ダラダラと帰り支度をしていた私は手を止めると

さて、誰がいくのかなと

事務所内をぐるりと見渡した。

しかし、驚くことに

さっきまで給湯室前でコーヒーを飲みながら
お喋りしていた2人も

各自の机でパソコンに向かっていた3人も

蜘蛛の子をちらすように、
既に居なくなっていた。

おいおーい……やられたわ

どうやら特級レベルということで、
五条か夏油が駆り出されることを皆一様に察して

一目散に逃げたらしい_____

残された私に、上長が奥のデスクから

“行ってこい”

親指でそう合図してきた。

呪術師ってほんとクソだな。人使い荒過ぎ。

退勤ボタンを先に押していなかった自分を恨みながら

私は壁にかかった車のキーを乱暴に取る。

13連勤中10連残業は、シンプルに鬼だ。

＊

逃げた奴ら絶対許さん、と鼻息も荒く
私は車庫に向かった。

きっと私が行くと言うことは
夏油が任務にあたることになるのだろうが

それは同時に、
夏油が高専の中に残っていたことも示していて

なんで、遊びに行ってないんだあいつは。
学生だろ遊びに行けよ、と

理不尽な怒りの矛先は夏油にまで及んだ。

目的の車庫に到着すると、その怒りのまま
鍵のopenボタンを強めにカチカチと押しながら
車を探す。

すると、奥の方でライトが点滅する1台を見つけ

一目散に小走りで向かった。

早く拾って、早く倒して、早く帰ろう。
流石に13連勤はしんどい！！

しかし、その願いも虚しく

目当ての車に着くや否や

いきなり物陰から首根っこを掴まれ

ここにきて早速のタイムロスが発生してしまった。