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主人公side




珍しく、任務終わりに用があるからと

我が儘を言う夏油を乗せて

神奈川の某ショッピングモールの駐車場に
車を止めた。



任務終わりに寄ったこともあり
なんとか閉店1時間前に滑り込みに成功。



すぐ戻るから、と
駐車場を駆けていく彼の背を見送ると


どうせ閉店ギリギリまで帰ってこないだろうと
たかを括り

ポケットからスマホを取り出し弄び始めた。






だが、そんな私の考えに反して


暇を感じる隙も与えず

ものの数分で夏油は帰ってきた。



任務でも稀に見るその帰宅の早さに
目を見張るも


何を買ってきたんだ?と声をかけるべく
車窓を下ろした。



しかしそこにいたのは

何も持たず、心ここにあらずという顔をして

扉の前に立ちつくす夏油のみ。





『……どうした?』

その不自然さを不審に思い、

私は恐る恐る声をかける。



しかしそれに対して、
彼はハッと意識を取り戻すと


夏「嫌なんでもないよ。行こうか」


力なく笑うだけで、
すぐに後部座席に潜り込み


それからは、もう詮索するなと言わんばかりに
すぐに窓に肘付き外を眺めだした。




私はその一連のことが
気になりはしたが、それ以上何も尋ねることはせず

高専へと車を走らせた。



無言の車内では、
聞いたことのない洋楽が1人でに流れていた。











暫くすると、ずっと外を眺めていたはずの夏油が

ぽつりと言葉を漏らした。




夏「正義とは、なんなんだろうね」




その声はあまりにも小さく
注意して聞かねば、スルーしてしまう程だった。





夏「弱気を助け強気を挫く、それが僕の正義としての守るべきポリシーだったんだ。けれど、それが少しわからなくなってしまった…」






車を降りた、たった数分で一体何があったのか…。



私はその問いに、無責任に答えることもできず

無言でバックミラー越しの彼を盗み見る。



暗くてよくわからなかったが

どうやらシルエットからすると、
どこか物憂げに首を垂れているようだった。



しかしそれも束の間。

すぐに伏せていた顔をもたげると
彼は気の抜けた笑みを作り



夏「…いや、何でもない。忘れてくれ」



自ら話を中断してしまった。





この時の彼に、

無理やりにでも理由を聞いて

一緒に答えを出していれば





少しでも、
彼の運命を変えることができたのだろうか。





今となっては全て、たらればの話だが

その思考につい縋らずにはいられないのだった。

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作者名:アイコ | 作成日時:2020年12月31日 23時

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