悪魔祓いと白い息 4 ページ5
温かいスープを飲ませてパンにかぶりつく様子を見届けたのち(何度かむせていた。慌てすぎ)、落ち着いたところで話しかける。シャークんはぱちぱちと音を立てて燃える暖炉の炎にきらきらと目を輝かせていた。手を握るとじんわりと暖かく、温度を戻し始めたようだ。
「シャークん、君は今までどこに住んでいたの？」
「E-13番通り。たまにパンをくれるやつがいたから」
運良く生き延びていた、ということだろうか。それがただの親切な人間で良かった。なんて、彼には言えないことだが。中には毒か、ほとんど毒同然の薬を混ぜたパンを家の無い者に与える連中もいる、というどこかで聞いた話が蘇る。悪趣味な事だ。
「それなら、君みたいな子どもを他に見て無い？」
「……見たことねぇよ。おっさんとか、そういう人なら知ってるけど」
そう言った後はゆらゆらと揺れる燭台の火に手をかざしていた。手足の霜焼けの酷さから、相当寒い思いをしていたことは明白である。しかしもう私の話に聞く耳は持ってくれ無さそうだ。
彼に一人でも信頼出来る大人が着いていれば良いのだが、あまりそれは期待出来ない。少なくとも、今すぐに帰る場所は……
13番通りには一度足を運んで置いた方が良さそうだが、人物像が掴めない限りは期待しない方が良い。何しろ情報が少なすぎる。本当にただの慈善活動だけをする者が、戦争の影響を受け続けている貧民街にいるのだろうか。
さて、この子の部屋を作ろう。生憎財産はあまり持っていないため、親戚を名乗る人物から譲り受けた、このだだっ広い邸宅に一人で住んでいる。使用人一人雇用する余裕も無く、屋敷は常に閑散としていた。売却も考えたが今思えば残しておいて正解だったかもしれない。
一年ほど使われていなかった客室は、埃が積もりに積もって扉を開けた途端に咳が出た。ベッドに掛けられたシーツも同様に塵の層を作っている。時計の針は止まっており、カーテンは色が抜けている所もある。
明日にでも街に出ようか。あの子は着いてくるだろうか。仕事外で誰かのために働くということを暫くやっていなかったからか、自然と口角が上がって行くのが、自分でも分かった。ああ、貧民街にボランティアが本当にいるのなら、こういう気持ちだったのかもしれない。
最低限の掃除をして、ベッドメイクをする。部屋に入った彼は大はしゃぎだ。こんな部屋でも喜ぶ人がいるということの幸せを、強く噛み締めた。
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葡萄(プロフ) - 名無しさん» 名無し様、コメントありがとうございます。世界観は特にこだわっておりますので、そう言って頂き本当に嬉しいです。明日以降もたくさん楽しんでいって下さい。 (2023年3月28日 22時) (
レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - まずは、4章までの更新お疲れ様です。世界観の作り込みが本当に細かく、一話毎に感想を伝えられないのが残念です(笑)お体にお気をつけてください！更新楽しみにしてます。 (2023年3月28日 20時) (レス) @page42 id: 8b083f4a7d (このIDを非表示/違反報告)
葡萄(プロフ) - 名無しさん» 名無し様、コメントありがとうございます。嬉しいお言葉、大変励みになります。実は雪の降る頃は非公開でしたので、まだ読めなかったんです……季節外れですが、楽しんで頂ければ幸いです。今後も頑張ります！ (2023年3月18日 19時) (レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - とても読みやすい文章で、心情の表現や描写も素敵です！雪の降る頃に見つけられなかったのが悔やまれます(笑)陰ながら応援しています。更新頑張ってください！ (2023年3月18日 19時) (レス) id: 8b083f4a7d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葡萄 | 作成日時：2021年5月13日 17時
