夜空を眺める、君を想う。【高尾和成】

想って２２ ページ22

「…高尾！この問題の答えは？」

「えーっとー、x＜ｙ…？」

何故か一番前にされた席のせいで
ぼおっとしているのがバレタらしいけど
得意な数学だったから、大丈夫。

この位置は、どうやったってAの顔がみえなくて
最初の頃はめっちゃ落ち込んでたなぁ。


「正解だ。」

その時、タイミング良くチャイムが鳴った。

俺の周りに何人か友達が来て
軽くだべってから廊下に出る。

今日は飯、外で食うかな


そう考えながら渡り廊下を歩いていると

「高尾君！」

佐藤の声が聞こえた。

「ん、なに？」

振り返ると、にっこり笑っていた。

「あ、あのさ
…斉藤さんの事、



好きなの？」


「あー、斉藤？違う違う。
ていうか無理だし」

そう言って、嗤う 演技をした。

このくらい酷く言わないと
きっと後からAは傷つく結果になる。

だから。

「そうなんだ。てっきり好きなんだと思って…良かったぁ。

…あ、あれって斉藤さんじゃない？」

振り返る。

そこには



俯いて走り出すAがいて
佐藤に視線を移す。



…ニヤリ、とその顔が歪んだ。



その一瞬が妙に長く感じて
体が動いたのはAが走って行った後だった。

俺は、Aの後を追おうと
走り出した。

「高尾。」

後ろから真ちゃんの声が聞こえて
拳を握りしめて振り向く。

「Aは恐らく体育館裏なのだよ」

「ありがと！」

渡り廊下を渡り終えて
体育館裏に走り出す。



＿＿＿また、傷つけちまった。





【声。】

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