夜空を眺める、君を想う。【高尾和成】

想って１４ ページ14

折り畳み傘を手に取ってAの家に戻ると、インターホンを押す。

もちろんさっきと同様、押しても出ない可能性はあるけど
一応。

トテトテ、と家の中から微かな足音が聞こえて

あ、起こしちゃったかな。なんて考えていると
ドアが開いた。

「はい。」

「よ、って…お前、何かあったの？」

目が赤くて、泣いたのかもしれないと思った。

聞かない方が良いのかとも思うけど
それがまた、俺のせいだったとしたら…

Aは黙って俺のジャンパーを差し出した。

俯いていて、どんな表情をしているのかが分からない。


「おーさんきゅ。」

「何の用なの？」

…この声。

怒ってる時とか、何かを我慢してる時の声だ。

俺も伊達に幼馴染やってるわけじゃねえんだぜ？

「…なんか怒ってるだろ」

「別に」

「いや、怒ってるね」

「別に、怒ってなんかいないし」

「怒ってる。俺が何年お前の事見てきたと思ってんの？」

ほんの少し、本音を漏らしてしまった。

一瞬、Aの顔が曇る。



「…それって、幼馴染だから？」


「どんなに私を見てきたとしても、幼馴染としてなんだったら
そんなのいらないよ」


…それって




自惚れてもいいのか？


そう言いたいのを堪えた。

「っそんなわけねぇだろ！」



俺は




小さいころからお前のことを




"好きな奴"として見てたよ。



「…え？」







【いらない。】

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