夜空を眺める、君を想う。【高尾和成】

想って１３ ページ13

「折り畳み傘、アイツに返しておくよ。」

「自分で渡したいんだよね。」

そう佐藤は言ったけど
俺が、渡したい。

話すきっかけが欲しい。

ほら、また。

自分で話しかけに行くのが怖くて、さ。





見落としちまったんだよ。

このとき、ちゃんと佐藤の表情を見ていればよかった。

『っまたあの子。』

そうすれば、雨音で聞こえなかった本当の事が

見えてきたかもしれないのに。


「…何か言った？」


「…！何も言ってないよ？じゃあお願いしようかな。
ありがとうって伝えておいてくれる？」


そう言って渡された手袋と傘は

少し水滴がついていた。

「ああ。じゃあな。」

「うん、またね。」





家に荷物を置くと、晩御飯のおすそ分けを渡してこいと頼まれて
Aの家に向かった。

鍵は開いていた。

「ったく、無防備だなぁ」

言っとくけど
俺はしょっちゅう出入りしてるけど
襲ったりはしてないから。

ちゃんと入ってもいいって本人に言われてるからね？

うん。

あがらせてもらって、リビングに向かうとソファで、Aを発見した。


「…ん…おと…さん」

寝言が聞こえた。

寂しいんだろうな……

俺はまだ濡れたままのAの体に自分のジャンパーをかけて
ポケットに入ってたメモ用紙にペンを走らせる。

そこまで書いて、折り畳み傘を家に置いてきたことに気が付いた。

一度家に戻ることにして、メモをテーブルに置いて
Aの頭を撫でた。

「ごめんな。」

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