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彼も、私を見ていた。
だが気付けば無表情は形を変えてこちらを睨みつけている。昨日とは少し違った雰囲気で。
蔑むように。
嗤うように。
瞳をぎらつかせて、怒りを露わにする獣のように。
「別に、なんでもいいじゃないですか」
だがそれも一瞬のことだった。彼はすぐに無表情に戻り、かと思えば瞬息で返ってきた言葉は、昨日より幾何か冷静さを含んでいるようには見えた。
とはいえ、今が授業中であるのに変わりは無く、依然彼が此処にいる理由は謎なままだ。
昨日のこともあって、信用出来ない。
然しそう思考しているうちに、宮坂はこちらに冷たい視線を投げかけたかと思えば、早々に踵を返して校舎へと入っていくのだ。
明らかに私を待っていたとしか思えないのに去っていく彼に困惑しながらも、最終的に自分の中に残った感情はひとつだけ。
(…………行かなくちゃ)
一瞬迷ったものの、すぐにその後ろ姿を追いかける。
彼の後ろ姿が「着いてこい」と、そう語っているように見えた。それはきっと間違いじゃない。
宮坂がどんな思いで私を待ってたか知らないが――――だからこそ私にはそれを知る権利がある。
……そして私自身も少なからず、その理由を知りたいと思っていた。
「………………ねえ宮坂、アンタ授業は?」
「授業なんて一限サボったところでただの寝坊としか思われませんよ」
「…………」
「てかサボるのはアンタも一緒でしょ、共犯者」
生意気なのは相変わらずだが、生憎、彼の煽りを気にするのはやめた。労力がもったいない。
関係ないと言わんばかりに足早に階段を上り始めた宮坂に、はあ、と一つだけ溜息を吐いて私はしぶしぶ着いていく。
それぞれ一階は一年、二階は二年の教室が並んでいるが、見向きもしないまま宮坂は通り過ぎていった。
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碧(プロフ) - わたぐもさん» わたぐもさま ありがとうございます。長らくお待たせいたしました。今後ともお楽しみいただければ幸いです。 (2022年7月2日 22時) (レス) id: 555a0dca31 (このIDを非表示/違反報告)
わたぐも(プロフ) - とっても好きな作品なので、再開凄く嬉しいです…! (2022年7月1日 23時) (レス) @page43 id: 5d152484ae (このIDを非表示/違反報告)
鱗川 - ゆっくりで良いので頑張ってください! (2022年3月25日 1時) (レス) @page40 id: d49fa68ddd (このIDを非表示/違反報告)
moeka(プロフ) - 最近更新がなくて寂しいです。更新してくれると嬉しいです。待ってます。 (2020年2月27日 14時) (レス) id: d61ed9781e (このIDを非表示/違反報告)
楓 - 更新再開するんですね...!ずっと待っていました!この作品の夢主ちゃん可愛いし、性格も大好きで憧れなんです。これからの更新楽しみにしています! (2019年3月4日 5時) (レス) id: cb7b132aff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Aoi | 作者ホームページ:http://nanos.jp/aika398/
作成日時:2017年11月8日 23時