42 溺愛 ページ47
風間は
横になったままのみやびの細い手首をつまんで
脈を診ている。
その傍らに座っている智三郎は
みやびの手首の皮が少しめくれて赤くなっているのを見て
胸が痛んだ。
駕籠のつかまり紐に括り付けられていた
痛ましい姿が
智三郎の脳裏に浮かぶ。
「その手首の傷、痕が残ったりはしねえだろうな？」
脈をとってる風間に横から問いかけると
風間は
智三郎を横目で見てニッと笑った。
「大丈夫、これくらい舐めときゃ治るって。」
言いながら
風間が
みやびの手首に唇を寄せようとしたので
「おいっ！」
慌てて智三郎が風間の頭を両手で掴んで押さえつけた。
くふふっ♪
と風間が含み笑いを漏らすと
みやびも
横になったままニコッと笑った。
「みやび？痛くないか？」
心配顔の智三郎に
みやびは
「･･大丈夫。」
ニッコリ笑って答えて見せたが
智三郎の表情は一向に晴れない。
「それにしてもカズの奴
みやびの手を縛るなんて乱暴なことしやがって！」
今度は
二宮に対してぶちぶち文句を言い出した。
「でも、そうしないと
みやびは
駕籠から転げ落ちてただろうよ。」
脈を測り終えた風間が
みやびの手を布団の中に入れながらそう言うと
智三郎は
ぎりりっと悔しそうに唇をかんだ。
「そりゃそうだろうけど･･」
どうにも納得しかねている様子の智三郎に
風間は
やれやれと肩をすくめた。
本当にみやびのこととなると
周りが見えなくなるんだから･･と呆れつつ
風間は
「ちょいと脈が弱い気もするけど
とんだりはしてないから、大丈夫だろう。」
三角に折られた小さな薬包と
たっぷり水の入ったギヤマンの水差しを乗せた
丸い塗り盆を
みやびの枕元にそっと置いた。
「とりあえず、いつもの散薬を飲んでおこう。」
風間の言葉を受け
「･･お父様、起こして？」
みやびが
布団の中からしなやかな腕を智三郎の方に差し伸べた。
その細い腕を自分の肩に乗せてやり
よいしょっと上半身を起こしてやったのだが
いまさらながら
みやびの体に触れて
(ちょっと力入れたら折れてしまいそう･･)
その華奢さにドギマギしてしまう智三郎だった。
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作者名：はっしー
作成日時：2018年5月16日 0時
