23 鳥肌男 ページ28
それからほどなくして
二宮が帰ってきた。
しかし
いつもの人をくったような態度で
しゃら〜っと涼しい顔の二宮ではない。
陶器のように白くなめらかな頬が
必死で走ってきたせいだろう
今は真っ赤だし
だらだら汗もかいている。
もう人相が変わっている。
こんな二宮は、すこぶる珍しい。
「みやび！水、持ってきたぞ！」
どこで調達してきたのか
しっとりと濡れた手ぬぐいと
冷たい水が入った青竹筒を手にした二宮が
途切れることのない人並みを斜めに突っ切って
ようやっと
大きな石灯籠の元にたどり着いたが
そこにいるはずのみやびが･･
みやびが
いないっ！！！
ザーッと音を立てて
二宮の全身の血が引いていく。
「み･･、みやび？」
呼べど返事は返ってこない。
「みやびっ？！」
周りを見回しても
あの
恥ずかしそうに笑う可憐なみやびの姿は
どこにも見当たらない！
「みやびっ！」
さっき
みやびがしゃがみ込んでいたその場所に
小さな巾着が落ちていた。
竹筒も手ぬぐいも放り出して
二宮は
砂利ごと巾着をひっつかんだ。
震える手の中の刺し子刺繍の巾着･･
間違いない
それはみやびが自分で刺繍したお手製の巾着だ。
一針、一針
あの子が丁寧に刺していたのを
二宮は
その目でちゃんと見ている。
「先生、見て！上手にできた！」
って嬉しそうに見せてくれた時の
みやびの笑顔が
目の前に浮かんで、すぐに消えた。
ギリリ･･
奥歯を噛みしめる二宮。
みやび･･
みやび･･
お前を一人にするんじゃなかった
さっき
あんなに苦しそうだったのに･･
みやび
どこに行った？
まさか
誰かに連れて行かれた？
誰に？
どこに？
ぞおっと
二宮の全身が総毛立つ。
黒い大きな手が
天から伸びてきて
みやびのあの細い体をひとつかみにして
いずこかへ連れて行ってしまう･･
そんな光景が
二宮の頭の中いっぱいに広がった。
想像力豊かな二宮の妄想は
どこまでもリアルだ。
気を失っているみやびは
なんの抵抗もせず
手足をだらりと投げ出したまま
黒い大きな手のひらの上で
ぐったりとしている。
黒く醜い指が伸びてきて
白くなめらかなみやびの頬をなで上げ
血のように赤い舌が
チロチロとみやびの細い首筋に這っていく･･っ
ってなことになったら
どーすんだよ！！！！！
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作者名：はっしー
作成日時：2018年5月16日 0時
