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うつほと雅紀は
手をつないで星を見上げた。
風もないのに揺れる炎のように
数え切れないほどの星たちが
真っ暗な夜空でチカチカと瞬いている。
宇宙そのものが
頭上に広がっているかのような
壮大な星空。
その迫力に圧倒され
二人は
何もしゃべらず
ただ
星空を見上げていたら･･
暗闇の向こう
「････」
囁くような微かな声が聞こえてきた。
墨を流したような闇に目をこらすと
草原の端っこ
海に突き出るような崖に
座っている潤雅の姿を見つけた。
しかし
二人は
息をのんだ。
なぜなら
潤雅は一人ではなかったから･･。
風が吹き渡っていく草原の中
座っている潤雅の前
一人の姫が
うっすら白く発光しているような
氷の襲(かさね)をまとった美しい姫が
静かに立っていたのだ。
その姫に
雅紀は見覚えがあった。
あの姫は
真綿の世界でちびっ子の智を抱っこしていた
あの姫君ではないのか？
あの姫は
君はだれ？と問うた雅紀に
『前の関白、藤原忠常の娘、咲子』と答えた。
つまり
雅紀とうつほの母親
二人を産み落としてすぐに亡くなった
花咲ける姫君、咲子だ。
・
真っ暗の草原にたたずむ咲子の体は
透き通っていて
夜の闇が透けて見えていた。
そんな儚げな咲子の前でうずくまっていた潤雅が
暗闇の中
ぼぅ･･っと微かに
白く発光している咲子に向かって手を伸ばした。
潤雅は
白く輝く五衣に隠れている咲子の手を
両手でそ･･っと包み込むと
いかにも大事そうにその手をなで
透き通った咲子の手の甲に
唇を寄せた。
咲子は
じっと立ったまま
自分の手に口づける潤雅を見下ろしている。
潤雅は
咲子の手から唇を放すと
咲子を見上げた。
咲子は
腰をかがめ
自分を見上げる潤雅の上に覆い被さっていく。
潤雅は
腕を伸ばして
近寄ってくる咲子の頬に手を添えた。
二人の頬が近づいていく。
すると
草の上に長くひいている純白の裳から裾にかけて
キラキラ輝く金色の粒が現れ
咲子の体全体を覆っていくではないか。
その金色の粒は輝くだけでなく
光に包まれた部分からゆっくり光の中にとけていく。
潤雅は
消えゆく咲子を
黙って見つめているだけ。
長い髪も手も消え
最後に
咲子の白い顔が
消えようとするその瞬間･･
雅紀とうつほは同時につぶやいた。
「かぁ･･、さま･･」と。
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asami(プロフ) - 一気読みしました、面白かったです。優美な平安貴族雅紀さんも、海で暮らすうつほもどっちも好きです！個人的には潤雅が好きです。何はともあれ幸せに終わって良かった！！ (2020年4月12日 19時) (
レス) id: 58c67b34bd (このIDを非表示/違反報告)
はっしー(プロフ) - がっはさん» あやかしを読んでくださって本当にありがとうございます！ものスゴく嬉しいです！こちらを書き上げてしばらくぼんやりしてたのでコメいただいてることに気づくのが遅くなってごめんなさい。読み返すだなんて、もう泣きそうです。ずっと緑さんを応援しましょうね。 (2017年9月18日 9時) (レス) id: c6f10b192f (このIDを非表示/違反報告)
がっは(プロフ) - 素敵なお話ありがとうございました。終わってしまうのが寂しいです。きっとこれからも何度も読み返すと思います。これからも緑愛に溢れた作品期待しています (2017年9月3日 6時) (レス) id: c4dbbce966 (このIDを非表示/違反報告)
はっしー(プロフ) - けめさん» 本当に感謝の気持ちでいっぱいです。最後まで書けて良かった。けめちゃん、ずっと見守ってくれて本当に本当にありがとう！けめちゃんにコメもらえて本当に嬉しいです。ありがとう！！ (2017年8月29日 22時) (レス) id: c6f10b192f (このIDを非表示/違反報告)
はっしー(プロフ) - けめさん» けめちゃん、私にとってこのお話は特別なものです。何で特別なものかというと、長い間あたためてきたからというだけでなく沢山の方に応援していただいて書き上げられたお話だからです。応援してくれた人の一人がけめちゃんです！けめちゃんの言葉にどれだけ励まされたか (2017年8月29日 22時) (レス) id: c6f10b192f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はっしー
作成日時：2015年3月24日 2時
