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雅紀は何を思って
瞳を潤ませるのか‥？
その真意は
うつほには分からない。
さっきまで
はしゃいでいた智とツノ丸も
雅紀がさっきまでと違って
涙ぐんでいるのに気づいたようだ。
今は
ちょっと離れた岩に座って
涙ぐむ雅紀を静かに見守っている。
雅紀の下腹部の傷は薄桃色にひきつれ
なめらかな白い肌の上に現れた
酷薄に笑う歪んだ唇のよう。
うつほが
そのひきつれた傷にそっと指を這わせると
雅紀は
ぴく‥、と肩を震わせ
「・・、 やだ・・。」
うつほの手に自分の手をかけ
やんわりと払った。
「傷‥、まだ痛い？」
うつほの問いに
雅紀は
ふるふると首をふる。
「痛く‥、ない‥。」
それだけ言って
雅紀の視線は下へ逃げていく。
「じゃ、なんで泣いてるの‥？」
うつほが小首をかしげると
雅紀は
つ‥、と顔を上げた。
雅紀の瞳に
涙が盛り上がっている。
今にもこぼれ落ちそう。
うつほは
雅紀の瞳をじっと見つめて
雅紀の答えを辛抱強く待った。
雅紀は
何も答えない。
答えないかわりに
雅紀は
細い手を
うつほに向かってゆっくりと伸ばした。
‥が
その手は
うつほの肩先に触れるか触れないかのところで
ためらうように
一瞬、止まる。
うつほは
首をひねって
中空で動きを止めた雅紀の指先を
ちらりと見た。
それから
また顔を真っ直ぐに雅紀に向けて
「‥‥なに？」
と、言った。
雅紀は
意を決したようにキュッと唇をかみしめ
うつほの肩に触れた。
そこには
ミミズ腫れのように
盛り上がった刀傷のあと。
「‥傷、 残ってる‥‥。」
雅紀がそうつぶやくと
ポロリ‥と涙がこぼれ落ちた。
「‥ 痛かった‥、でしょ‥？」
雅紀の指先が
うつほの肩に残る傷をなぞる。
ポロポロ‥
綺麗なまるい涙の粒が
雅紀の頬を転がり落ちる。
「こ‥、こわか‥ったね‥。」
「うん、怖かった。」
うつほの肩の傷をなぞる雅紀の手に
そっと手を重ねるうつほ。
「あの戦いのこと‥
今も
思い出すんだ‥。」
雅紀がそう言うと
うつほは
こくん‥と小さく頷き
雅紀の手を
両手できゅうっと握った。
「俺も‥
思い出すよ。
俺を斬ろうと
刀をふりおろす
あの人の、顔を‥。」
雅紀が
パッと顔を上げた。
「うつほ！
あの人だなんて‥‥。
僕らの、父さまだよ！」
雅紀の声に
うつほは
苦しげに顔を歪めた。
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asami(プロフ) - 一気読みしました、面白かったです。優美な平安貴族雅紀さんも、海で暮らすうつほもどっちも好きです！個人的には潤雅が好きです。何はともあれ幸せに終わって良かった！！ (2020年4月12日 19時) (
レス) id: 58c67b34bd (このIDを非表示/違反報告)
はっしー(プロフ) - がっはさん» あやかしを読んでくださって本当にありがとうございます！ものスゴく嬉しいです！こちらを書き上げてしばらくぼんやりしてたのでコメいただいてることに気づくのが遅くなってごめんなさい。読み返すだなんて、もう泣きそうです。ずっと緑さんを応援しましょうね。 (2017年9月18日 9時) (レス) id: c6f10b192f (このIDを非表示/違反報告)
がっは(プロフ) - 素敵なお話ありがとうございました。終わってしまうのが寂しいです。きっとこれからも何度も読み返すと思います。これからも緑愛に溢れた作品期待しています (2017年9月3日 6時) (レス) id: c4dbbce966 (このIDを非表示/違反報告)
はっしー(プロフ) - けめさん» 本当に感謝の気持ちでいっぱいです。最後まで書けて良かった。けめちゃん、ずっと見守ってくれて本当に本当にありがとう！けめちゃんにコメもらえて本当に嬉しいです。ありがとう！！ (2017年8月29日 22時) (レス) id: c6f10b192f (このIDを非表示/違反報告)
はっしー(プロフ) - けめさん» けめちゃん、私にとってこのお話は特別なものです。何で特別なものかというと、長い間あたためてきたからというだけでなく沢山の方に応援していただいて書き上げられたお話だからです。応援してくれた人の一人がけめちゃんです！けめちゃんの言葉にどれだけ励まされたか (2017年8月29日 22時) (レス) id: c6f10b192f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はっしー
作成日時：2015年3月24日 2時
