642 求婚(1) ページ22
「た、‥たのしみ、じゃ、の。
あの、ひ、姫君なら‥、元気な‥お子を
ようけ‥、産んで、く、れるで‥あろうよ。」
にんまり笑う長老に
滝沢は
ちょっと肩をすくめて言った。
「逆に
あの姫君の方が
帝の仕事を横取りしそうですね。
孔明灯を上げた時の帝の残念っぷりったら‥
もう
百年の恋も冷める‥って勢いでしたよ。」
くっくっく‥
長老が
枯れ枝のような細い体全体を
揺するようにして
笑った。
「‥そ、それでも、あの、姫‥ぎみは
帝を‥、選び‥、なすった。」
そう‥
明子は、櫻井帝を選んだ。
姉、咲子をめぐって
潤雅と確執があった櫻井帝を
明子は、選んだ。
・
・
明子を中宮に‥という話が
三条の屋敷に舞い込んだのは
一行が
瀬戸内から都に戻って
どれほどもたっていない時だった。
帝からの使者が
「明子姫を主上の中宮妃として
お迎えしたい。」
と申し立てた時
忠明は
文字通り、卒倒した。
・
「‥な、なにをっ！
きゅ、急に、なにを申される！！」
忠明が
気を取り直して問いただしたが
使者は
まったく動じず、同じ事を繰り返した。
「帝が、明子姫を中宮に‥と願われている。
どうぞ
急ぎ、参内くだされますよう‥。」
櫻井帝の中宮としては
忠明の兄の子・宗周が娘、寧子姫がいたが
宗周の事件をきっかけに
寧子は
宮中を去っていたのだ。
「忠明殿、お返事を‥。」
使者が
ずいっと膝を進めて詰め寄ってきたが
忠明は
開いた口がふさがらない。
まさか
明子が、中宮に？
そんなこと‥、夢にも思わなかったので
なにも
なにも、言葉が出ない！
そこに‥
「いやです。」
涼やかな声が
忠明の背後から聞こえてきた。
ふり返ると
いつからそこにいたのか
御簾の向こうに
明子が
静かに座していた。
「あ、明子！」
忠明が驚きの声を上げる。
しかし、父・忠明の驚きっぷりなど全く意に介さず
明子は
御簾の影から
使者に堂々とこう言い放った。
「求婚されるなら
本人からされたいわ。
こんな大切なことを
使者から聞かされるなんて最悪よ！」
「明子っ！」
忠明は
もう一度卒倒しそうになりながら
明子を叱りつけた。
その時‥
あははははっ
と
明るい笑い声が響いた。
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asami(プロフ) - 一気読みしました、面白かったです。優美な平安貴族雅紀さんも、海で暮らすうつほもどっちも好きです！個人的には潤雅が好きです。何はともあれ幸せに終わって良かった！！ (2020年4月12日 19時) (
レス) id: 58c67b34bd (このIDを非表示/違反報告)
はっしー(プロフ) - がっはさん» あやかしを読んでくださって本当にありがとうございます！ものスゴく嬉しいです！こちらを書き上げてしばらくぼんやりしてたのでコメいただいてることに気づくのが遅くなってごめんなさい。読み返すだなんて、もう泣きそうです。ずっと緑さんを応援しましょうね。 (2017年9月18日 9時) (レス) id: c6f10b192f (このIDを非表示/違反報告)
がっは(プロフ) - 素敵なお話ありがとうございました。終わってしまうのが寂しいです。きっとこれからも何度も読み返すと思います。これからも緑愛に溢れた作品期待しています (2017年9月3日 6時) (レス) id: c4dbbce966 (このIDを非表示/違反報告)
はっしー(プロフ) - けめさん» 本当に感謝の気持ちでいっぱいです。最後まで書けて良かった。けめちゃん、ずっと見守ってくれて本当に本当にありがとう！けめちゃんにコメもらえて本当に嬉しいです。ありがとう！！ (2017年8月29日 22時) (レス) id: c6f10b192f (このIDを非表示/違反報告)
はっしー(プロフ) - けめさん» けめちゃん、私にとってこのお話は特別なものです。何で特別なものかというと、長い間あたためてきたからというだけでなく沢山の方に応援していただいて書き上げられたお話だからです。応援してくれた人の一人がけめちゃんです！けめちゃんの言葉にどれだけ励まされたか (2017年8月29日 22時) (レス) id: c6f10b192f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はっしー
作成日時：2015年3月24日 2時
