623 後悔の念 ページ2
純友の毒を含んだ言葉に
衛都たちの顔色がサッと変わった。
「黙れっ！」
「何も知らんくせにっ！」
「口を慎め、この悪党！」
それぞれが
手に手に武器を持って
今にも
飛びかからん勢いで
純友をぐるりと取り囲んだ。
「悪党‥？」
今度は
純友の顔色が変わり、片眉がぴくりと動いた。
「‥どうして、俺が、悪党なんだ？」
純友が
甲板に突き立てていた斬馬刀を引き抜いた。
「俺よりも‥
お前たちの方が正しいんか？
そんなん
誰が決めたんじゃ？！
俺よりも先に政権とっとるから正しいんか？
早い者勝ちか？ ああっ？！」
肩の高さまで持ち上げた斬馬刀の切っ先を
衛都たちの顔に向けて
ゆっくりと音もなくまわった。
「‥正しいことしとんだったら
不満のある者が出てくるっておかしいだろ？」
斬馬刀の切っ先を
一人、一人、順番に
衛都たちの鼻先に突きつけていく。
「不満を抱えておるんも、一人や二人じゃない‥。
大勢の者に不満言われる帝の方が
間違ってるんと違うんかいっ！」
口から泡を飛ばして
純友が叫んだ。
その興奮した声にかぶさるように
「純友‥」
潤雅の
静かな声がして純友は顔を上げた。
「‥お前の言う『大勢の者』って、 ‥どこに、いるんだ？」
この一言に
純友は絶句してしまった。
顔を上げた純友の目の前に
夜空に向かって舞い上がっていく
無数の孔明灯を背に
すっくと立つ潤雅の姿があったのだ。
橙色に輝く孔明灯の明かりは
まばゆく
星の輝きさえもかき消してしまうほど。
そして
その輝きは
純友のやり方を否定する人たちの
考えそのもの‥。
「純友よ‥
お前が言う『大勢の者』は
どこにもいない。
お前についてくる者は、誰もいない。
お前の息子も、死んだ‥。
お前は‥、お前は、‥一人だ。」
潤雅が
苦々しくつぶやいた。
グッと詰まる純友‥。
「‥そ、そんなの、お前も同じじゃないか！
結局お前も
我が子を手にかけて‥
一人、残されちまったんじゃねえかっ！」
純友の苦し紛れの叫びに
思わず
目をつぶってしまう潤雅‥。
そう‥
それは真実‥。
自分も
純友と同じ‥、一人になってしまった‥。
あの時‥
うつほを 斬らなかったら‥
あの時‥
雅紀を 瀬戸内に行かせなかったら‥
いいや
そもそも、あの時‥
そして
あの時も‥
思い出すのは
どうにもできない後悔ばかり‥。
潤雅の胸が詰まり
涙が
こみ上がってきた。
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asami(プロフ) - 一気読みしました、面白かったです。優美な平安貴族雅紀さんも、海で暮らすうつほもどっちも好きです！個人的には潤雅が好きです。何はともあれ幸せに終わって良かった！！ (2020年4月12日 19時) (
レス) id: 58c67b34bd (このIDを非表示/違反報告)
はっしー(プロフ) - がっはさん» あやかしを読んでくださって本当にありがとうございます！ものスゴく嬉しいです！こちらを書き上げてしばらくぼんやりしてたのでコメいただいてることに気づくのが遅くなってごめんなさい。読み返すだなんて、もう泣きそうです。ずっと緑さんを応援しましょうね。 (2017年9月18日 9時) (レス) id: c6f10b192f (このIDを非表示/違反報告)
がっは(プロフ) - 素敵なお話ありがとうございました。終わってしまうのが寂しいです。きっとこれからも何度も読み返すと思います。これからも緑愛に溢れた作品期待しています (2017年9月3日 6時) (レス) id: c4dbbce966 (このIDを非表示/違反報告)
はっしー(プロフ) - けめさん» 本当に感謝の気持ちでいっぱいです。最後まで書けて良かった。けめちゃん、ずっと見守ってくれて本当に本当にありがとう！けめちゃんにコメもらえて本当に嬉しいです。ありがとう！！ (2017年8月29日 22時) (レス) id: c6f10b192f (このIDを非表示/違反報告)
はっしー(プロフ) - けめさん» けめちゃん、私にとってこのお話は特別なものです。何で特別なものかというと、長い間あたためてきたからというだけでなく沢山の方に応援していただいて書き上げられたお話だからです。応援してくれた人の一人がけめちゃんです！けめちゃんの言葉にどれだけ励まされたか (2017年8月29日 22時) (レス) id: c6f10b192f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はっしー
作成日時：2015年3月24日 2時
