622 この戦いが終わったら‥ ページ1
ｺﾎﾟ‥
ｺﾎﾟｺﾎﾟ‥
水の中で気泡が弾けるような音が
智の体から聞こえてくる。
鱗が浮き上がった智の腕が
大事そうに抱きかかえているのは
ぐったりとなったうつほ‥。
潤雅は
その場で棒を飲んだように立ち尽くした。
雅紀と同じように
青ざめたうつほの顔を見るなり
潤雅は
理解した。
うつほも
雅紀と一緒に
逝ってしまったんだ、ということを。
うつほは
自分を一度も父と呼ばなかった。
自分も
うつほに対して
父親らしいことは一度もしていない。
だから
この戦いが終わったら‥‥
うつほと雅紀を
二人いっぺんに抱きしめたかった。
仕事も辞め
都から離れて
親子三人だけで暮らしてみたいと思っていた。
うつほと自分の間の今までの空白を埋め
親子をやり直すつもりだった。
それもこれも
すべて
この戦いが終わったら‥
と思っていたのだ‥。
そこに
無情な純友の声が響いた。
「ははっ
うつほも死んじまったのか！」
はっと潤雅は
純友の方に振り返った。
そこにいたのは
立っているのもやっとという状態の純友。
斬馬刀を甲板に突き立てて
それを杖代わりに寄りかかってニヤニヤしていた。
「‥結局
うつほが死んだのは
潤(うるう)の君、お前が斬った傷が元だろ。
どうだい？
自分の息子を殺した気分は。」
純友は
震える膝を押さえながらも
潤雅を愚弄する言葉を吐き散らしている。
潤雅は
怒りの炎をたぎらせながら
純友を睨みつけたが
純友は
フンと鼻先で笑い飛ばした。
「潤の君よ‥
さっきは
俺の腕や足を斬り落とすとか言っていたが
一足早くに
自分の息子には実践済みだったって訳だ。
なんせ
てめえの息子のうつほは
一時は西海海賊団の一員として
戦いに加わっていたんだから
俺と一緒に御政道に刃向かったっていう点では
同類だもんな！」
はははっと
声を上げて笑った後
純友は
「なあ！」と
智に同意を求めてきた。
その歪んだ顔を
智は
うつほを抱いたまま無表情に見つめていた。
何の相づちもうたない智に
チッと舌打ちをした純友だったが
気を取り直し
また潤雅の気持ちを逆なでする言葉を吐いた。
「うつほの身代わりに送り込まれてきた雅紀も
気の毒だったよな。
自分の父親が
おつとめのためなら
我が子も
手駒の一つとして
使い捨てにするような奴でさ。
おかげで
雅紀は‥
死んじまったな。」
苦しげにゆがむ潤雅の表情を見て
純友はニヤリと笑った。
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asami(プロフ) - 一気読みしました、面白かったです。優美な平安貴族雅紀さんも、海で暮らすうつほもどっちも好きです！個人的には潤雅が好きです。何はともあれ幸せに終わって良かった！！ (2020年4月12日 19時) (
レス) id: 58c67b34bd (このIDを非表示/違反報告)
はっしー(プロフ) - がっはさん» あやかしを読んでくださって本当にありがとうございます！ものスゴく嬉しいです！こちらを書き上げてしばらくぼんやりしてたのでコメいただいてることに気づくのが遅くなってごめんなさい。読み返すだなんて、もう泣きそうです。ずっと緑さんを応援しましょうね。 (2017年9月18日 9時) (レス) id: c6f10b192f (このIDを非表示/違反報告)
がっは(プロフ) - 素敵なお話ありがとうございました。終わってしまうのが寂しいです。きっとこれからも何度も読み返すと思います。これからも緑愛に溢れた作品期待しています (2017年9月3日 6時) (レス) id: c4dbbce966 (このIDを非表示/違反報告)
はっしー(プロフ) - けめさん» 本当に感謝の気持ちでいっぱいです。最後まで書けて良かった。けめちゃん、ずっと見守ってくれて本当に本当にありがとう！けめちゃんにコメもらえて本当に嬉しいです。ありがとう！！ (2017年8月29日 22時) (レス) id: c6f10b192f (このIDを非表示/違反報告)
はっしー(プロフ) - けめさん» けめちゃん、私にとってこのお話は特別なものです。何で特別なものかというと、長い間あたためてきたからというだけでなく沢山の方に応援していただいて書き上げられたお話だからです。応援してくれた人の一人がけめちゃんです！けめちゃんの言葉にどれだけ励まされたか (2017年8月29日 22時) (レス) id: c6f10b192f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はっしー
作成日時：2015年3月24日 2時
