-託された願い- ページ10
脱兎の如く屋敷から逃げ出した私たちは、夜になったので野宿を洒落こむことにした。
使用人たちと代わり替わりでカムイ様たちを見ていたけれど、流石に移動しながらでは疲れた。素を出したいがため、少しだけ野営の中心部から離れた所で休憩をする。
見上げれば、私の世界とは違う透魔王国の空がそこにあった。浮島があちこちに浮いている景色は、ビル街に慣れた目にはどれも新鮮に映った。
「本当に異世界なんだなぁ……」
夢見心地のような、けれど現状に疲れた声でそう呟く。
「……イオリ」
すると、森の奥から旦那様が現れた。
竜が現れるときには屋敷に不在だった彼は、急いで合流しに来たのだろう。その証拠に息はかなり荒れていて、目元に涙が薄すらと浮かんでいる。
……いや、それより今の独り言聞かれた？
何も言ってないですよーっと誤魔化すしかない。なんでここは……
「旦那様…！？どうしてここに……」
お前どうしてここにいんの？でゴリ押す！
「屋敷に戻ったらミコト達がもう避難をした後で、急いで追ってきたんだ」
「そうなんですか…それなら、早くミコト様にお会いになってください。きっと安心なさるでしょう(早くあっちにいけ)」
「うん。勿論、ミコトと顔は合わせるよ。でもその前に、君に渡すものがあるんだ」
そう言って取り出したのは、赤い液体が入った見るからにヤバい小瓶だった。
……なんだこれ。
「これは僕の…『神祖竜』の血。君にこれを飲んで欲しいんだ」
何 言 っ て る ん だ お 前 ？
疑問と気持ち悪さと理解不能で頭がパーンなりそうなんだが。
は？血？それを飲めと？？常識をどこに置いてったんですかね？？
言った本人は至って真面目なのが余計にサイコ味を感じる。上司の性癖なんて知りたくなかったわ…
「突然ごめん……でも、もしミコトやカムイ…そして君自身に何かあった時、きっと竜の力が役に立つ。
気味が悪いだろうが、どうか飲んでくれ」
頭を下げながら瓶を渡されて、動揺しながらも受け取った。
後ろ盾のない身として拒否できないのもあるが、なによりも目の前の人があまりに必死な様子で、何か理由があるのだろうと思ったからある。
それに……
(捨てられたチワワみたいに縮こまれると、流石に断れんよなぁ)
つい憐れんでしまい、この大人の形をした子犬を見捨てることは出来なかった。
故に。
「カムイ様の臣下として、承りました」
そう、頭を垂れた。
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津田刑部(プロフ) - siinaさん» そう言ってもらえて嬉しいです！気が向いた時にちょこちょこ更新しているので、他の小説を読んでいる時にたまにふらっと来たら続きがあったりするかもですね。コメントありがとうございます！ (2018年7月15日 20時) (
レス) id: 8429db5f79 (このIDを非表示/違反報告)
siina(プロフ) - 続き見たいなあー… (2018年7月9日 18時) (レス) id: 33a818f932 (このIDを非表示/違反報告)
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