59 夢の欠片 ページ9
Aの中の、眠っていた小さな記憶が再生される。
まだ、Aの父が、エーテル財団の職員として働いていた頃のこと。
いつものように、エーテルパラダイスの中で遊んでいた幼いAは、あるときエレベータの前で立ち止まって、エレベータの操作パネルをじっと見つめていた。
「A、どうした。」
そんなAに気付いたグラジオが、彼女に近付く。
「船の下に、地下室があるの？・・・この前、パパが言ってた。」
Aの言う、船の下の地下室とは、地下一階の船着き場より更に下の階にある、財団関係者しか知らない部屋のことだ。
「ああ、そうだ。でも、オレたちは、入れないぞ。」
保護区に自由に出入りできる子供たちも、さすがに地下の研究室まで、自由に出入りはできなかった。
「何をするところなの？」
Aは、地下の部屋がどんな場所なのか、見たくなってしまったのだ。
「ポケモンの、いろんな研究をしてる。」
「けんきゅう？」
「ああ。例えば・・・そうだな。ポケモンが地球以外にも居るのか、とか。ポケモンを人の力で生み出せるのか、とか。」
Aは聞くなり、口をへの字に曲げて呟いた。
「・・・難しそう。」
グラジオはAの変な顔を見て、ニッと笑う。
「そうだな。父上は、まだ誰も知らないことを発見して、皆に夢を与えたいと言ってた。地下の部屋は、オレも見たことない。きっと、夢の欠片が、沢山詰まっている場所だ。」
「ゆめのかけら・・・。」
まだ何も知らなかった、あの日の自分たち。
ただ無邪気に、大人が未来のため、人のため、ポケモンのために、楽しい夢の詰まった研究を沢山しているのだと思っていた。
「大きくなるまでガマンだ、A。大きくなって、地下室へ入れるようになったら、一緒に見に行こうな。夢の欠片。」
あの日、陽気に笑うグラジオと約束した。
大きくなるまで、グラジオと一緒に行けるようになるまでは、地下室へは行かないと。
「うん・・・。」
Aは笑って頷き、グラジオに手を引かれながら、エレベーターを離れて、保護区へ遊びに行った。
その日が来るまでのお楽しみと、胸を弾ませていた。
結局、約束は守れなかった。Aも、そしてグラジオも。
望むことなく地下室へ来てしまったAが目にしたのは、夢の欠片とはほど遠いもの。
グラジオが自分を助けるために、すぐそこまで来ていることも分からないまま、
Aは崩れた夢に、涙するのだった。
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カーター(プロフ) - 物部さん» 初めまして！ご感想ありがとうございます！戦闘シーンの文を褒めていただけるのは初めてでとても嬉しいです！文字だけでどれだけバトルの臨場感を表せるか、書き手としてもバトルしています！難しい場面ですが、続きの更新も頑張ります！ (2017年2月10日 23時) (
レス) id: 4077529587 (このIDを非表示/違反報告)
物部(プロフ) - 初めまして。戦闘シーンも綺麗な文ですね。続き楽しみにしています！ (2017年2月10日 23時) (レス) id: fcc84377d6 (このIDを非表示/違反報告)
カーター(プロフ) - 真季さん» ご感想ありがとうございます！あんな感じで良かったでしょうか、自分では考えていない展開だったので、小説の世界を広げられるアイディアをいただけてとても嬉しかったです！続きも先程UPしましたので是非お楽しみください！モーテルの方も更新頑張ります！ (2017年2月6日 23時) (レス) id: 4077529587 (このIDを非表示/違反報告)
真季 - ピジョンの進化シーンいれて頂けて嬉しかったです！ありがとうございます。カーターさんの作品、モーテルパラダイスも楽しく読ませて頂いています！最新頑張って下さい(*^^*) (2017年2月6日 21時) (レス) id: b95c01deac (このIDを非表示/違反報告)
カーター(プロフ) - 真季さん» 今後の展開のリクエストにつきまして、実は次回から最終話直前までの下書きがまだゼロなので←！ 実現可能かこの場での明言は避けますが、勿論！試作検討してみます！万一ご希望に添えなかったらごめんなさい…！貴重なご意見ありがとうございます！ (2017年1月24日 22時) (レス) id: 4077529587 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カーター | 作成日時：2017年1月13日 17時
