7 別々の日々 ページ7
リーリエもグラジオも、ルザミーネも、とてもあたたかい人だった。
それから約一年後、代表の右腕と呼ばれた専務・・・Aの父が病に倒れた。
一命は取り止めたものの、職を続けることは困難となり、Aの父はエーテル財団を退職。
その後、質の高い医術を求め、Aと両親はカントーへ引っ越ししてしまったのだ。
Aもリーリエも、別れ際には大泣きしたものだ。グラジオは泣きじゃくる二人をなだめるのに苦労していた。
結局、どんなにグラジオが笑わせようとしても、このときだけは泣き止まなかった記憶が、Aには残っていた。
Aの父はそれから二年間生き延びたが、その後遂に帰らぬ人となった。
すぐに訃報が綴られた手紙がルザミーネの元にも届いたが、グラジオがその事実を知ったのは、彼が11歳になった頃だった。
そして、その頃には・・・グラジオの父も既にウルトラホールに飲み込まれており、行方が分からなくなっていた。ルザミーネの様子が徐々に変わっていったのも、夫が消えてからのこと。
Aに連絡を取りたいところではあったが、グラジオたちに余裕は無かった。
お互い、会おうと思うことすら忘れた頃に、
Aの父が使っていた部屋に眠っていた職員バッジが、二人を引き合わせることとなった。
素直に喜べないのは、グラジオがエーテル財団を出ていってしまったからという理由に尽きる。
「A。」
・・・・!
名前を呼ばれ、Aは過去の記憶から我に返った。
グラジオはいつの間にか、モーテルの受付から部屋の鍵を受け取ってAの前に居た。
「ごめん、ぼーっとしてた・・・。」
Aは適当に誤魔化しながら笑った。そして俯きながら、恐る恐る呟いた。
「リーリエちゃん、元気かな・・・?」
・・・今のグラジオくんに、リーリエちゃんがどうしてるかなんて、分かるのかな・・・。やっぱりそれも、聞いてはいけないことなのかな。
彼に質問する度、心の中で怯えなければならなかった。
「・・・。」
グラジオはAの顔付きを見て、自分がAを怖がらせていると悟った。
ずっとスカル団と共に居たせいなのか・・・。Aに刺々しくなっていたことに気付かないとはな。
グラジオは片手を顔に添え、気を落ち着けたあとで、正直に答えた。
「元気にしていると思うが・・・分からない。オレは二年間、家に帰っていないからな・・・。」
「そうなんだ・・二年間も・・・。」
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カーター(プロフ) - ココアンさん» 更新を楽しみにしてもらえて嬉しいてす!執筆も楽しみながら頑張ります!応援ありがとう! (2017年1月9日 23時) (レス) id: 4077529587 (このIDを非表示/違反報告)
ココアン(プロフ) - 続きができるの楽しみです!応援しています!頑張ってください!! (2017年1月9日 23時) (レス) id: 73f1966ab0 (このIDを非表示/違反報告)
カーター(プロフ) - るんさん» 気に入ってもらえて嬉しいです!執筆頑張ります☆コメントありがとう! (2017年1月4日 22時) (レス) id: 4077529587 (このIDを非表示/違反報告)
るん - この小説大好き!! 続き書くの頑張ってね!! (2017年1月4日 19時) (レス) id: 7b07b0d042 (このIDを非表示/違反報告)
カーター(プロフ) - ななさん» 私も続きを完成させるためウズウズしてます!またハラハラする展開ですが、今後をお楽しみに!また読んでくれてありがとう! (2017年1月4日 8時) (レス) id: 4077529587 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:カーター | 作成日時:2016年12月6日 22時