32 同じ気持ち ページ32
「オマエ・・・どこに行っていた・・・。」
グラジオは肩で息をしながら、Aを見つめた。呼吸が乱れ、声が震えた。
「お腹空いただろうから・・・帰って食べよう?」
Aは、温かさの残る夕食が入った袋を提げていた。
夕飯を買いに行っただけ、か?
書き置きとは、こういうときにこそ、やっておくものだ。買い物で部屋を出るなら、そうするとメモに綴ってくれれば良いものを。
グラジオは脱力感に溜息を付き、Aが書いた手紙のことに言及した。
「別れの置き手紙かと思ったぞ。オマエまで・・・居なくなるかと思った。」
「・・・ごめんなさい。」
悪いことをしたという表情で、Aはグラジオに近付き、様子を伺いながら、彼の胸に寄り添った。
グラジオのことだから、あの静かな部屋で、手紙の内容の真意を理解し、自分との思い出を胸の内に留めるのだろうと思っていた。
まさか、グラジオがこんなに息を切らしながら自分を探しに来るとは、Aは思っていなかった。
別れの手紙、そのつもりだった。
Aは、本当はアーカラの港まで行っていたのだ。
アローラに来て自分のやるべき事を終え、彼女はとてつもない虚しさを感じていた。
グラジオの手紙はルザミーネへ渡せぬまま役目を終えた。職員バッジも返せたものの、あのような形でエーテルパラダイスを去ることになってしまった。
何か大切なものを失くしてしまったような虚無感は、どうしても手紙に綴り纏めることが出来ず心に残った。
ピジョンと散歩をして気を紛らわすつもりだったのが、いつの間にかAの足は、港まで動いていた。
帰ってしまおうか、と、そう思った。
だが、カントー行きの大きな船を目前に、
グラジオの顔が思い浮かび、どうしても船へ乗ることができなかった。
辛い思いに苛まれても、まだ自分は、グラジオと離れたくない。
それが解ったから、戻ろうと決めたのだ。夕飯を買いに街まで下りた、そう言い訳をすることにして。
離れたくない思いは、互いに同じだった。
夕飯を買いに行っただけにしては、Aが寄り添い寂しそうな顔をしていたもので、グラジオは、すぐにAの本当の真意やこれまでの行動を察した。
「・・・オマエに暴言を吐くのは好きじゃないが・・・バカだな。・・・帰るぞ。」
グラジオは、とりあえず安心したようにフッと笑い、Aの手を取った。
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カーター(プロフ) - ココアンさん» 更新を楽しみにしてもらえて嬉しいてす!執筆も楽しみながら頑張ります!応援ありがとう! (2017年1月9日 23時) (レス) id: 4077529587 (このIDを非表示/違反報告)
ココアン(プロフ) - 続きができるの楽しみです!応援しています!頑張ってください!! (2017年1月9日 23時) (レス) id: 73f1966ab0 (このIDを非表示/違反報告)
カーター(プロフ) - るんさん» 気に入ってもらえて嬉しいです!執筆頑張ります☆コメントありがとう! (2017年1月4日 22時) (レス) id: 4077529587 (このIDを非表示/違反報告)
るん - この小説大好き!! 続き書くの頑張ってね!! (2017年1月4日 19時) (レス) id: 7b07b0d042 (このIDを非表示/違反報告)
カーター(プロフ) - ななさん» 私も続きを完成させるためウズウズしてます!またハラハラする展開ですが、今後をお楽しみに!また読んでくれてありがとう! (2017年1月4日 8時) (レス) id: 4077529587 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:カーター | 作成日時:2016年12月6日 22時