星夜の手紙

17 少しの間 ページ17

スカル団が悪の組織であることは、言わずともAには既に見当が付いていた。


どうして悪い人に関わるの？どうして変わってしまったの？

スカル団に関わってほしくない。

こんなグラジオは見たくない。


そんなことを言われるのだろうと思っていた。

いや、先の浮かんだ言葉のような、ぶつけたい疑問や非難の言葉が、彼女にだっていくらでもあるはずなのだ。なのに、


悪者と付き合いがある事実や罪を責め立てることもなく、

自分にとって大事な存在だと、心の闇に捕まるなと、手を差し伸べてくる。


年下のAから、こんな対応をされるなんて。


グラジオは、返答の仕方とか、何か言われるだろうとか、小さなことで悩んでいた自分が情けなくなった。


大事な人・・・最後に誰かにそう思われていたのはいつだったか。


「あんまり優しくしないでくれ・・・。」

グラジオはAの両肩に手を置き、息を吐いて項垂れた。

苦しくなってしまう。

Aにいつも見せてきた、頼れる存在の、良い兄貴分でなくなってしまう。


Aにとっては、優しくしているつもりなんか無くて、それがただ、彼へ言える唯一の言葉だったというだけだ。他に、何か優しくした覚えもない。


グラジオにとっては、

昔のまま気軽に話せるAの存在や、目覚めたときに見えた微笑みや、辛くて流した涙、労いの言葉、

そして先程の言葉、

何に歪められてもいない純粋な、大事な人という言葉。

全てが、彼女から齎される優しさだった。


「・・・グラジオ・・・？」

肩に置かれた両手が背中に回り、Aの顔がグラジオの胸部に収まってしまう。

「このままにさせてくれ・・・少しの間だけでいい・・・。」

Aには驚きもあったようだが、やがて、少しの間じゃなくてもいいよ、と呟き目を瞑った。


こういうときの少しの間は、長い時間のように錯覚させられる。

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