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15 意味のあること ページ15

グラジオが食べ物を持ち帰りドアを開けたとき、Aは鏡台の椅子に座っていた。

「お帰り。調達、ありがとね。」

グラジオはAから差し出されたタオルを手に取り、丸テーブルに食べ物の入った袋を置いた。

雨に濡れてしまった腕をタオルで拭き、ヌルとピジョンにマラサダやポケまめを与えると、グラジオは鏡台で何かを片付けるAに近付き、声をかけた。


「何かしていたのか。」

「・・・うん、手紙書いてたの。」

「手紙・・・?」


彼女が書いていた手紙は二つ。

ひとつはAの母に。国際便の手紙が届くのが先か、自分がカントーへ帰り着くのが先か、競争になりそうだという。

そしてもうひとつは、Aの亡き父に。


「父さんにも、グラジオに会えたって伝えたいの。・・・死んだ人に手紙なんて、おかしいでしょう?

でもね、手紙を書くのって、自分のためでもあるの。声にならないことや、口で伝えられないことを文字にして、自分の心を整理していくの。

目の前に居ない相手にも、きっと手紙に込めた気持ちは伝わるんだよ。」


父への手紙は、数日間お供えした後自ら回収するのだという。他人には意味のないことのように思えるが、それは・・・確かにAにとって、意味のあることなのだという。

グラジオはその考えを否定しなかった。

そして、彼女が決して言葉に出さずにグラジオに伝えようとしたことも、解った。


『声にならないことや、口で伝えられないことを文字にして、自分の心を整理していく』

『目の前に居ない相手にも、きっと手紙に込めた気持ちは伝わる』


それが、グラジオと母との間にある亀裂を修復する・・・いや、修復まで行かずとも、過去の苦しみや孤独感に歪む自分の心を納得させる手段になるかもしれない、ということ。


今すぐにペンを取るわけではないが、グラジオには良くも悪くも、Aの言葉が心に留まった。


「オレの隣で寝たって、手紙に書くなよ。」

グラジオが誤魔化すように言うと、Aは顔をほんのり赤くし笑った。

「やだ、書かないよそんなこと。ご飯、食べよう?冷めないうちに。」
 

16 不都合な問い→←14 労い



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設定タグ:ポケモンSM , グラジオ , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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カーター(プロフ) - ココアンさん» 更新を楽しみにしてもらえて嬉しいてす!執筆も楽しみながら頑張ります!応援ありがとう! (2017年1月9日 23時) (レス) id: 4077529587 (このIDを非表示/違反報告)
ココアン(プロフ) - 続きができるの楽しみです!応援しています!頑張ってください!! (2017年1月9日 23時) (レス) id: 73f1966ab0 (このIDを非表示/違反報告)
カーター(プロフ) - るんさん» 気に入ってもらえて嬉しいです!執筆頑張ります☆コメントありがとう! (2017年1月4日 22時) (レス) id: 4077529587 (このIDを非表示/違反報告)
るん - この小説大好き!! 続き書くの頑張ってね!! (2017年1月4日 19時) (レス) id: 7b07b0d042 (このIDを非表示/違反報告)
カーター(プロフ) - ななさん» 私も続きを完成させるためウズウズしてます!またハラハラする展開ですが、今後をお楽しみに!また読んでくれてありがとう! (2017年1月4日 8時) (レス) id: 4077529587 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:カーター | 作成日時:2016年12月6日 22時

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