六話 ページ6
「…握手お願いします」
「あはは、さっきから何回か手握ってたんですけどね」
いやはや驚いた。多分ここ最近一番驚いたことだろう。握った手は思いのほか大きくしっかりしていた。
思わず握っている手をガン見する。
「あ、あの流石にそんな見られると…」
「……思ったよりも手がしっかりしてるなと思って」
そういうと相川さんは納得したようにああと言うと部屋の隅を指さした。
そこには高そうなギターケースがある。
「多分ギターとかやってるからだと思います。まあその前から結構でかかったけど…」
「へぇ…いいですねギター。でも俺相川さんの手もいいと思います」
「そうですか?別に特別綺麗なわけでも手入れしてるわけでもないんですけど…」
そう気恥しそうに目をそらして頬をかく相川さん。
ずっと思っていたが見た目よりもだいぶ柔らかい性格の人だ。なんと言うか、気を使うタイプなんだろうと俺でも思うくらい。
だからこそそんな彼を見てふっと笑みをこぼし、もう片方の手も重ねた。
「いえ、綺麗ですよ。努力してる人の手です。俺、所謂手フェチってやつですけど、ただ綺麗な手よりも少し傷ついた手の方が好きです」
言っちゃうと、相川さんの手はどストライクですね。
そう言えば一瞬惚けた顔をした後、赤い顔を更に赤くした。
「うぅん…要さんってタラシさんなんですね…恥ずかしいです、ほんとよく言えますね」
「それは俺も思います。小さい頃からの癖なんですよ、慣れてください」
一瞬、一瞬だけ、昔のほの暗い記憶が過ぎった。
だがそれを押し殺して笑顔で言ってみせる。相川さんはどうだろうか。俺のこれに勝ってくれるだろうか。
拭いきれない不安と疑念に心が染まりそうになる。
だがそんな俺に相川さんは
「僕だけこんなんでなんか悔しいから絶対に慣れて見せますよ!これでも慣れには自信があるんです」
覚えておけとそう言われるのは初めてだった。
面白い人だと少し笑いながら楽しみにしてますと告げる。相川さんと話すのは今までの人間に比べればだいぶ楽だ。感情の起伏がいつもより大きくなる。
意外とここに住んで正解だったのかもしれない。
そう思った。だがそんな気持ちは一瞬で消え去るのだ。
「そう言えばまだもう一人いるんじゃ?」
「あ、はい。僕と一緒にAfter the Rainとして活動してる人です。まあ多分快く迎えてくれますよ!」
本当に大丈夫だろうかと心配していた時だった。玄関の扉が開く音がした。
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いおり - あ、あの…完結なんですか?そうじゃないことを祈りたい…。更新していただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。 (2020年7月5日 0時) (レス) id: 5ad600b11d (このIDを非表示/違反報告)
いおり - すっごい面白かったです!!これから夢主くんがどんな風に幸せになるのか、気になります!!!更新、頑張ってください。待ってます!! (2020年7月5日 0時) (レス) id: 5ad600b11d (このIDを非表示/違反報告)
どーる(プロフ) - FRISKさん» いっぱいちゅきになってください(はーと) (2018年3月23日 18時) (レス) id: b65a035319 (このIDを非表示/違反報告)
FRISK - や、やだ、好き← (2018年3月23日 18時) (レス) id: c25a3a0724 (このIDを非表示/違反報告)
どーる(プロフ) - 風音迷夜さん» 帰ってきましたよ!!受験が無事終わりましたのでこれからは最新頑張ります!ほんと応援してくださってありがとうございます…! (2018年3月22日 20時) (レス) id: b65a035319 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:どーる | 作成日時:2017年9月28日 0時