一話 ページ1
＿＿＿＿それは酷い雨の日のことだった。
ザーザーと降り注ぐ水の粒。体に打ち付けるそれを真っ向に浴びながら、俺は一人佇んでいた。
濡れた髪が顔にひっついて気持ち悪い。着ていた服も肌にくっついている。
目を瞑れば蘇るさっきまでの光景。
『ねぇ、要、私の大好きな要。私を助けて？』
ピリッと痛みが走る。どうやら手を強く握りすぎたらしい。赤い筋が滴っていた。
遂に痛覚まで麻痺してきたか。このままいっそ…なんて考えてしまう。
本当に笑えない人生だ。全く笑えない。
ははっ…
「あー……消えてー…」
＿＿＿＿それは俺の終点だった。
雨の中一人佇む彼の名は椎名要。とある裕福な家庭に生まれた一人息子だった。
生まれつき整った顔立ちと朗らかな笑顔。成績は優秀、運動も大抵のことは人並み以上こなす。そんな完璧な彼に人々は魅了された。
存在の全てが魅力的な彼の最も惹かれるところは、その"瞳"。
少し垂れた見開けば大分大きな瞳は、程よく細められていてそれがなんとも妖艶なのだ。
ハイライトがあるのに黒く深いそれは、ほんの数秒で相手を堕としてしまうほどに引き込まれる。
その瞳で老若男女、関係なく魅了した。
堕ちれば最後、彼の声は途端に甘く中毒性のある麻薬になる。その細く白い手に縋らずにいられなくなる。その…華奢な身体を取り込んでしまいたくなる。
それを彼はわかっていた。自分は危険な存在なのだと理解した上で、特定の相手に好意を抱かぬようにした。
だが、彼も人間だ。人を愛し、思い、どうしようもなく焦がれる。
それは彼にとって初めてのことだった。勤め先の会社で出会った自身より年上の女性。包容力のある性格と物腰の低さに惹かれたのだ。
交際を初め平和に過ぎ行く時間に彼は安堵した。
ああ、俺も人を愛していいのだ、と。
それから三年たったある日のことだ。そこで彼は知ってしまった。彼女に年に何度か渡していた金が全て私欲に使われていたことに。彼女にいい様に使われていたことに。
彼は信じられなくなった。
彼女と同居していた家を必要最低限の荷物を持ち飛び出した。
彼の目には既に希望がなかった。ただただ闇に浸っていた。
消えたいと、
無くなってしまいたいと、
そう切に願う彼に差し伸べられたのは同じ闇だった。
そう、同じ闇のはずなのにそれは酷く暖かかったのだ。
「大丈夫ですか…？」
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いおり - あ、あの…完結なんですか?そうじゃないことを祈りたい…。更新していただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。 (2020年7月5日 0時) (
レス) id: 5ad600b11d (このIDを非表示/違反報告)
いおり - すっごい面白かったです!!これから夢主くんがどんな風に幸せになるのか、気になります!!!更新、頑張ってください。待ってます!! (2020年7月5日 0時) (レス) id: 5ad600b11d (このIDを非表示/違反報告)
どーる(プロフ) - FRISKさん» いっぱいちゅきになってください(はーと) (2018年3月23日 18時) (レス) id: b65a035319 (このIDを非表示/違反報告)
FRISK - や、やだ、好き← (2018年3月23日 18時) (レス) id: c25a3a0724 (このIDを非表示/違反報告)
どーる(プロフ) - 風音迷夜さん» 帰ってきましたよ！！受験が無事終わりましたのでこれからは最新頑張ります！ほんと応援してくださってありがとうございます…！ (2018年3月22日 20時) (レス) id: b65a035319 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：どーる | 作成日時：2017年9月28日 0時
