プロローグ ページ1
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声が出ない。
それは、産まれて来て物心ついた時に最初にぶつかった壁だった。
周りが話せるようになっていくなか、私は一人、意味の無い母音しか発することが出来なかったのである。所謂、先天性の失声症だ。
それを憐れみ、無様に思い、からかってくる人間も少なくない。
「ほら!悔しかったらやり返して見ろよ!」
そして、その憐れみや蔑みが、今のような状況に繋がる。
……簡単に言うと、虐め。
伸びた顔の横の髪を引っ張られ、口を開くも声が出ず空気だけが吐き出された。
「何だよ、面白くねぇの!」
「呻くぐらいしてみろよ〜!!」
「助けでも呼ぶか?あっ、呼べねぇんだよな!」
そう言って、ケラケラと耳障りな笑い声を響かせる目の前の男子5人。
………この人たちの心の声はなんて醜いんだろう。
人を見下すことでしか楽観的になれない。哀しい人達。
それなら、此所で虐められ続けてこの人達の幸福の感受に貢献した方が良いのだろうか。
だけど。
『(怖いなぁ……)』
殴られて、蹴られて、髪を引っ張られて、罵られて。
そんなことに耐えられる程、私は強くない。
悲観的になっても、必ず何処かで助けを呼びたいと願っている。
何とか言えよっ!!と拳が降ってくるのを見て、反射で目を瞑った。
しかし、いつまで経っても痛みは来ない。
代わりに降ってきたのは、
「お前大丈夫か?」
という温かい言葉。
思わず顔を上げると、黒髪を上で束ねた、翠色の眼の男の子。
見ると、彼の背後では金髪の男の子と黒髪に赤い布?を巻いた男の子2人が5人を縛り上げていた。
あまりに突然の事にパチパチと何度も瞬きを繰り返すと、
「そりゃあ驚くよなぁ……」
と頭を掻いていた。
「俺は奈良シカダイ。お前は?」
『…ぅ…ぁ……』
何度も口を開くも、声は出ない。
それを見たシカダイは、声出ねぇのか?と訊ねてきた。
恐る恐る頷くと、
「(珍しいな)」
と声が聞こえてくる。
きっと、また虐められる。
そう思って俯くと、大丈夫だ、と頭を撫でてきた。
「(そんなの人それぞれなのに、コイツはんなもん気にしてんのか?)」
シカダイ「気にすんなよ」
ピクリと肩が思わず動く。
初めてだったんだ。
こんなに優しい言葉をかけて貰えたのは。
温かい手を差し伸べてくれたのは。
じんわりと視界が滲んでいく。
これが、私が初めて人を信頼した日だったんだ。
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遊星(プロフ) - 儚奈さん» はい。待ちますので楽しみにしてます。頑張って下さい。 (2018年12月26日 22時) (レス) id: cc3dcebb37 (このIDを非表示/違反報告)
儚奈(プロフ) - 遊星さん» 更新停止…は、する予定無いですよ?大丈夫です、最後まで書きますよ! 待ってくださっている皆様の為にも頑張って早く投稿しますね(*^^*) (2018年12月26日 22時) (レス) id: 941560be5a (このIDを非表示/違反報告)
遊星(プロフ) - 素敵な話なのに更新停止は勿体無いです。早く続き読みたいです。 (2018年12月26日 22時) (レス) id: cc3dcebb37 (このIDを非表示/違反報告)
儚奈(プロフ) - 遊星さん» そう言って頂けてとても嬉しいです(*^^*) だけど受験もあるので難しく……なるべく更新は早くしようと思いますが、亀更新はやはり拭えません。どうぞ気長にお待ちください……(´-ω-`) (2018年12月16日 15時) (レス) id: 941560be5a (このIDを非表示/違反報告)
儚奈(プロフ) - あほうどりさん» いやいやいや…本当に素材が良いだけなんです。こんなにも沢山の読者様がついてくださっているのも奇跡ですよ(^_^;) (2018年11月29日 16時) (レス) id: 941560be5a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:儚奈 | 作成日時:2018年5月2日 22時