騎士を名乗る吸血鬼-18- ページ23
やっと進み始めた、すずりん
喜ばしいことなんだけど、ナッちゃんみたいに素直に喜べなかった。
なんだか遠くに行ってしまいそうな気がして、すずりんを引き止めたいと思ってしまった。
「…ごめんね」
小さな声で目の前の彼に謝られた気がした。Knightsには、まだメンバーが足りない。彼がいちばん理解しているであろう人が足りていない。
俺も、セッちゃんも、まだ止まったままだ。そんな俺らに対する謝罪だろうか…………
それとも………………
「凛月…?」
「なんでもないよ」
なんでもないわけないのに、口から自然と吐き出されたその言葉はなんかありますって正直に言ったのと同じようなもので
鋭い彼はそれに気づいてるはずなのに
「そっか」
何も言わないでくれる。そんなところが、すずりんのいいところ。でも、きっとそんな風に優しすぎるところが、すずりんの悪いところ。
「目標があるから、今は進むだけ
もう、前なんて分からなくなっちゃったけど、何かしら見えるはずだから
何も見えなかったら、全部全部全部
嘘になるでしょ?」
泣きそうな声でのすずりんが俺に問い掛けた。あんなこと、簡単に昇華しきれるわけないよね……
「うん
全部が嘘になんてならないよ」
やっと俺に見せてくれたすずりんの綻び。そこには強くて、美しい貴公子の仁兎すずな、なんていなくて、やっと彼を見つけられた気がした。
俺がすずりんに言った言葉なんて兄者みたいに力を持ったものにはならないけど、せめて今だけは彼が安らげばいい。
俺が持つ魔力をそっと言葉に込めた。
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作者名:雪桜 | 作成日時:2016年9月25日 12時