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__近づいてくる気配がする。
少し体が痛いな。あーそっか。ソファで寝たんだっけ。
Aの暖かな良い匂いが近くでしてる。
そっと僕の前髪をかき分けたその手を合図に、僕は目を開けた。
いつも悠々と僕の前で微笑んで見せるAが、珍しく驚いた顔をしていた。
しかし何もなかったかのようにその手はどけられて、また僕の目に髪がかかる。
「おはよ、五条くん」
「んん…」
「ソファじゃ狭かったね」
そう思ったなら今日からベッドで寝かせろ。
ついでに君ともどうにかならせろ。
今、僕の顔を覗き込んで一体何をしていたのか、寝ぼけた頭ではそれを聞く知力も皆無だった。
ただ焼けた香ばしいトーストの匂いにつられてむくりと体を起こす。
「朝、ご飯派? パン派?」
「パン……」
「パン焼けてるよ」
別に僕はどちらでもないんだけど、そもそも食べない日だってあるんだけど。
今は美味しい香りが僕にパン派だと言わせた。
まだ冴え切らない頭を、もう既にブラウン色になっているコーヒーを飲んで起こす。
ちらっと目の前を見るとちょこんと着座して彼女は行儀よく手を合わせていた。
「……コーヒー、ありがとー」
「うん。甘さ足りなかったらここにお砂糖あるから」
「ん」
………僕の事、何でも分かってるみたいに。
Aが調整してくれたホットコーヒーは、僕がいつも飲むコーヒーと完全一致していた。
低血圧で嫌になる朝が、今日は良い気分だ。
というよりこれから2週間こんな気分の良い朝が続くのか。
「五条くん、起こしてごめんね。もうすぐ出ないとだから」
「え、もう出んの? 早いねぇ」
「今日早出の日で」
僕は生憎建前上は恋人(仮)だけど合鍵なんてもんは昨日の今日のために持たされてないので、Aと一緒に家を出なきゃならない。
本当は出勤ギリギリまで寝てたいし若干煩わしいとも思ってんだけど_。
「五条くん、このまますぐだよね。それじゃあ、」
「まだ出勤すんの早いし送ってってもいーい?」
「え、いいの? ありがとう!」
彼女を勤務先の病院まで送って、手を振ってまた電車で4駅先まで戻る。
それから悠々と歩いて学校まで向かったが、着いたのはいつもの出勤の20分も早かった。
「なっなみーん。オハヨウ」
「……珍しく早いですね。嫌な予感がします」
「酷くない?」
_こんな朝は初めてで、僕は心底気分が良い。
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花帆 - 両者の視点で本心が読めるのも面白いです♪続き楽しみにしています! (2022年9月28日 2時) (レス) @page28 id: 8832d32b96 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - yukinoさん» yukino様、作者の様々な作品に目を通して頂き大変うれしい限りです。yukino様から頂いたコメント、全て拝見しております。いつも励みになるコメント、ありがとうございます! これからもどうぞご支援頂けると幸いです。 (2022年1月20日 5時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
yukino(プロフ) - 私呪術廻戦では五条悟が一番好きなんですよ!(知るか) 読んでて,とても面白いです!!!続き気になります!頑張って下さい!! (2022年1月17日 20時) (レス) @page18 id: b465ac1425 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 董香さん» 董香様、コメントありがとうございます!嬉しいお言葉、励みになります!(^^)これからも頑張れます! (2021年5月31日 16時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
董香(プロフ) - はじめまして!こんにちは! 読んでてすごくおもしろいです!!!これからも楽しみにしてます (^^) (2021年5月30日 13時) (レス) id: cdc6ebec75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2021年5月29日 15時