..... ページ20
.
「まさか。気遣いのき、の字も知らない自分大好き人間に彼女なんかできるわけないわよ」
「えー、僕そんな風に見える?」
悟が反論の言葉を口にするより、野薔薇が先手を打つ。
いつもと変わらないポーカーフェイスであるが、その雰囲気は些かながら安心の空気を纏った。当然、その変化に生徒3人は気付かない。
ただ、恵だけはそれでも不審そうな目をカートに向けながら声を零した。
「けど、何かお揃いの箸とか、ピンクのコップとか……五条先生、趣味じゃないスよね」
「あーうん。鋭いねー恵」
_うーん、これはどうしたものか。
何とかその場から上手くかわそうと思った悟だったが、案外逃がしてはくれない恵の攻撃に、余裕の表情を崩さぬまま頭をかいた。
興味津々でこちらを窺う他の二人にも悩まされ悟が「んー」と考え込んだ時だ。
「……悟?」
救世主といえばいいのか、なんというのか。
悟が振り返った先にはAが居た。
その手には、今日のAの着ているニットと同じアイボリーのスリッパ。
首を傾げた、彼女の柔らかに巻かれたくすみグレーの艶やかな髪が肩からさらりと落ちた。
「……五条せんせ、知り合い?」
「んん、知り合いっていうか」
告げる前に、近づいてきた彼女が悟の持っていたカートにスリッパを入れる。
その行動によって、彼ら3人は言葉を持たずして顔を見合わせた。
「え、……ええっ!? マジで彼女と来てたん!」
「しかもめっちゃ美人だな……私でも敵わんわ」
「比較すんな」
色づく生徒3人を横目に、悟はどこから説明しようか、と、とりあえず彼らが自分の学校の生徒である事だけ伝えてみせた。
「こんにちは」と挨拶するAに対して、稀に見る美人に固まる恵と野薔薇。
唯一平気そうな悠仁が、「ねーねお姉さん」と口を開く。
「お姉さん、五条先生のカノジョ?」
「ばっッ、お前」
「釘崎も知りたがってんでしょ?」
ぎゃーぎゃー騒ぐ野薔薇と悠仁。
_彼女というか、友達というか。今は、違うんだけど。
どう答えようか。というか勝手に答えて良いものなのか。
悟の脳内が試行錯誤する。その間1秒に満たず。
「__うん」
そんな中、彼女が頷いた。
ただ一人の小さな頷きで、目線が彼女へ集中する。
「付き合ってるの。私達」
.
670人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
花帆 - 両者の視点で本心が読めるのも面白いです♪続き楽しみにしています! (2022年9月28日 2時) (レス) @page28 id: 8832d32b96 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - yukinoさん» yukino様、作者の様々な作品に目を通して頂き大変うれしい限りです。yukino様から頂いたコメント、全て拝見しております。いつも励みになるコメント、ありがとうございます! これからもどうぞご支援頂けると幸いです。 (2022年1月20日 5時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
yukino(プロフ) - 私呪術廻戦では五条悟が一番好きなんですよ!(知るか) 読んでて,とても面白いです!!!続き気になります!頑張って下さい!! (2022年1月17日 20時) (レス) @page18 id: b465ac1425 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 董香さん» 董香様、コメントありがとうございます!嬉しいお言葉、励みになります!(^^)これからも頑張れます! (2021年5月31日 16時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
董香(プロフ) - はじめまして!こんにちは! 読んでてすごくおもしろいです!!!これからも楽しみにしてます (^^) (2021年5月30日 13時) (レス) id: cdc6ebec75 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:おそらまめ | 作成日時:2021年5月29日 15時