07-思わぬ遭遇 ページ19
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カートを引きながら入り口をくぐる。
天井の高い店に入るとしばらくぶりに人のごった返した雰囲気を感じた。
さり気なく彼女を守りたい、と腰を引き寄せたが、「歩きづらいよ」とやんわりと引き剥がされてしまった。
「どこから見よっか」
「A、どっか見たい所ある?」
「食器とか見たいな」
その言葉に二つ返事でカートを押す。
西洋風の白い食器が並んだコーナーで彼女は一目散に箸へと目をやった。
「ね、見て。悟、かわいい」
「えーっいいじゃん! 可愛い」
「ちょうど2本セットで売ってるから買おうよ」
「うん。そうしよっか」
そうして、いつかみたくぽんぽんと考えなしにかごの中に放り込むAを後目に、僕の目についたのは隣のコーナーの一番前に並べられていたスリッパだった。
そういえば、いつも彼女が用意してくれていた来客用のスリッパは僕の足には合わないし、新しいのが必要だと思ってたんだよな。
「Aー」
「んー?」
「スリッパ、買っていい?」
「いいよ、見に行こうよ」
僕の言葉に全く否定の文句なしに、一緒にカートを押して家具のスペースに移動してくれるA。
そうして数あるスリッパの中で何でもいい僕は、とりあえず適当にサイズの合うやつを手に取った。
「ね、悟。こっちの方が履き心地良いし、1年使えるかもよ」
「えっそう? じゃあそっちにしようかな」
「良かった。返してくるね」
少し離れた場所で何か真剣に吟味しているかと思えば、僕のスリッパを選んでくれてたんだ。可愛い。
「僕が返してくるよ」という暇もなく、彼女は「私もスリッパ欲しくて」なんて言い逃げしてゆったりと生活雑貨の角に消えた。
「……あれ?」
カートを隣にすぐ近くの柱に身を預けてAを待っていると、にぎやかな雰囲気と明らかに見知った気配を感じ取った。
……まさか。いくら休日のおでかけ日和だからって、……いる筈が。
「やっぱり!! 五条先生じゃん!」
「先生、こんな所で何してんの?」
「あっれー? 君たち、こんな所で会うなんて奇遇だねえ!」
悠仁に恵に野薔薇。まさかこんな高専から遠く離れた場所で、しかもこんなタイミングで出会うとは思ってもみなかった。
平素通りを装って受け答えする。
すると、ぺこりとお辞儀だけした恵が、僕の隣にあったカートを見て呟いた。
「……まさか、彼女と来てるんですか?」
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花帆 - 両者の視点で本心が読めるのも面白いです♪続き楽しみにしています! (2022年9月28日 2時) (レス) @page28 id: 8832d32b96 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - yukinoさん» yukino様、作者の様々な作品に目を通して頂き大変うれしい限りです。yukino様から頂いたコメント、全て拝見しております。いつも励みになるコメント、ありがとうございます! これからもどうぞご支援頂けると幸いです。 (2022年1月20日 5時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
yukino(プロフ) - 私呪術廻戦では五条悟が一番好きなんですよ!(知るか) 読んでて,とても面白いです!!!続き気になります!頑張って下さい!! (2022年1月17日 20時) (レス) @page18 id: b465ac1425 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 董香さん» 董香様、コメントありがとうございます!嬉しいお言葉、励みになります!(^^)これからも頑張れます! (2021年5月31日 16時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
董香(プロフ) - はじめまして!こんにちは! 読んでてすごくおもしろいです!!!これからも楽しみにしてます (^^) (2021年5月30日 13時) (レス) id: cdc6ebec75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2021年5月29日 15時