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「……っくく、…」
「…いつまで笑ってるの…」
「だって、さっきのAときたらさあ…!」
「出発!」なんて意気込んでたくせに、サイドブレーキを下げるのを忘れていたせいでいつまで経っても車は発進しなかった。
アクセルを全開に踏み込んでも進みが遅いので、僕が「…サイドブレーキ、」と呟いた時慌てて彼女はレバーを下げたのだが。
アクセルを踏んだままにしていたおかげで急加速して、危うく事故るところだった。
「僕に向き直ったAの顔、あまりにも顔面蒼白だったから……あーやばい、笑いが止まらない」
「……次笑ったら、知らないんだからね」
「あーごめんって! Aちゃん、怒んないで?」
笑わないで、とは言われつつも、その後ずっと真剣な表情をしたシャープな横顔がいじらしくて、どうしようもなくにやけは止まらなかった。
長い大橋を走り終えてようやく見えてきたショッピングセンター。
「運転お疲れ様」と言いかけて彼女を見た僕だったが、心なしかAの横顔はさっきよりも緊張していた。
「…A? どしたのー」
「じ、実は……。
私、駐車が一番苦手なんだよね」
「ぶふっっ」
至極不安そうな顔で僕の方を見るAに思わず僕も吹き出してしまった。
そうこう言っているうちにパーキングエリアに入場して、遂に駐車のタイミングが来た。
「僕何も言わないから、一度一人で入れてみてよ」
「…頑張る」
緩慢な速度でRにギアを入れ替えたAがハンドルを回してブレーキをゆっくり足踏みする。
休日という理由で混雑したショッピングセンターの駐車場は絶妙な具合に車が停まっているので、駐車が苦手な彼女は車同士の間に駐車をしなければならない。
……あー、これはぶつかるな。車退けるか?
なんて思っているとギリギリで気付いたAが慌ててブレーキを勢いよく踏んで、僕たちは前につんのめった。
「あ、ごっごめんね! ぶつかりそうだったから……!」
「ぜーんぜん大丈夫だよ」
「……悟さん、助けて下さい」
「…………もーしょうがないな!」
完璧だと思ってた彼女に頼られるなんて。
なんて優越感。わざと余裕ぶってみたけどにやけは止まらない。
「右にハンドル切り替えして」と僕のアシスト通りに従うA。
彼女が無事に車庫入れを完了したおかげで、ようやくその表情から笑顔が窺えた。
「ありがとう。悟」
「……どーいたしまして」
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花帆 - 両者の視点で本心が読めるのも面白いです♪続き楽しみにしています! (2022年9月28日 2時) (レス) @page28 id: 8832d32b96 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - yukinoさん» yukino様、作者の様々な作品に目を通して頂き大変うれしい限りです。yukino様から頂いたコメント、全て拝見しております。いつも励みになるコメント、ありがとうございます! これからもどうぞご支援頂けると幸いです。 (2022年1月20日 5時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
yukino(プロフ) - 私呪術廻戦では五条悟が一番好きなんですよ!(知るか) 読んでて,とても面白いです!!!続き気になります!頑張って下さい!! (2022年1月17日 20時) (レス) @page18 id: b465ac1425 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 董香さん» 董香様、コメントありがとうございます!嬉しいお言葉、励みになります!(^^)これからも頑張れます! (2021年5月31日 16時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
董香(プロフ) - はじめまして!こんにちは! 読んでてすごくおもしろいです!!!これからも楽しみにしてます (^^) (2021年5月30日 13時) (レス) id: cdc6ebec75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2021年5月29日 15時