10-その言葉を追いかけて ページ26
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「__色事は銘々稼ぎ、ってね」
「…何それ? ことわざ?」
「恋が実るかは自分次第で、誰のせいにも出来ないって事だよ」
「え〜なにそれ。難しいことわざ知ってるんだね、五条くん」
「俺の事何だと思ってんだよ」
彼と知り合って半年経った時、ふとそんな事を言われた。
いつもちゃらんぽらんで、でもどこか危うげな彼に惹かれていた。
誰に褒められたって、愛を伝えられたって興味は無かった。
彼からの言葉には、誰も敵わないから。
久しぶり。会いたいな。
なんて、今まで誰にも送った事のないメッセージ。
高専を卒業してからも時々連絡を取ってはいたけれど、社会人になってからはまるっきりなかった。
彼に会いたくなった。
何年経っても、やはり彼を上回る人なんている筈も無く、ここ4年間は、一人だって彼氏を作った事はない。
もうすぐ28歳になる。これが最後。
誰にも負けなかった私が唯一勝てなかった彼に挑む。
ずっと勘づいていた。彼も、それなりに気はあったという事については。
だけど回りくどい言い方しかしてこないし、私が付き合った恋人については何も触れてこないしで、多分友達を続けたいのだろうと、私も何も仕掛けてこなかった。
「__五条くん」
10年ぶりに会った彼は、変わっていなかった。
随分と背が伸びたんだな。
それ以外は、本当に同い年かを疑うほど変わらない美貌で、すぐに彼に気づいた。
私が声をかける前に私に気付いてくれていた五条くんは、存外驚いた顔をしていたけれど、声をかけた直後には緩々と口角を綻ばせてみせた。
「やっほー。久しぶりじゃん。元気してた?」
「そうだね。五条くん、全然変わらないからすぐわかっちゃった」
「えー嘘。変わったでしょ。Aは変わんないけど」
柔らかくなった口調。確かに、少し大人びたかもしれない。
だけど彼が昔から纏う雰囲気は変わらぬままで、私は彼の隣に立つという事が女にとってどれほどの名誉か、計り知れない優越感を感じていた。
「……嘘だよ。五条くんは変わった
ますます格好よくなった」
「……!」
逃げるが勝ち。
わざとゆっくり歩いていた歩みを早め、その些か見開かれた目から離れるように私は目の前のカフェの扉を自身で開けた。
高専時代は、伝えられなかった言葉を10年かけて伝える事にするね。
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花帆 - 両者の視点で本心が読めるのも面白いです♪続き楽しみにしています! (2022年9月28日 2時) (レス) @page28 id: 8832d32b96 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - yukinoさん» yukino様、作者の様々な作品に目を通して頂き大変うれしい限りです。yukino様から頂いたコメント、全て拝見しております。いつも励みになるコメント、ありがとうございます! これからもどうぞご支援頂けると幸いです。 (2022年1月20日 5時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
yukino(プロフ) - 私呪術廻戦では五条悟が一番好きなんですよ!(知るか) 読んでて,とても面白いです!!!続き気になります!頑張って下さい!! (2022年1月17日 20時) (レス) @page18 id: b465ac1425 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 董香さん» 董香様、コメントありがとうございます!嬉しいお言葉、励みになります!(^^)これからも頑張れます! (2021年5月31日 16時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
董香(プロフ) - はじめまして!こんにちは! 読んでてすごくおもしろいです!!!これからも楽しみにしてます (^^) (2021年5月30日 13時) (レス) id: cdc6ebec75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2021年5月29日 15時