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ガチャン
若干重たい玄関を開けても、まだ中は暗いままだった。
午後11時。もうとっくに帰ってると思ってた。
今日は散々な日だった。
月曜日だというのに特例の任務が出て、特級呪霊だからと僕が駆り出される。
ただでさえ、今朝方の彼女とのやりとりに苛立ちを感じていた上に、上からの愚にもつかない指令に逆らうことも出来ず呪霊を祓う。
——もうAは仕事を終えたんだろうか。
そしてその足で顔も知らぬ月並みな男の元に向かっているんだろうか。
そんな事が頭によぎって、加減を間違えた結果攻撃の範囲が広くなり始末書を書かされる結果となった。
冷蔵庫を開けて手前の方にあった僕の飲むヨーグルトを取り出す。
彼女が一緒でないと食事を摂る気にもならない。
そしてこの時間になってもまだ帰る気配がない彼女に、沸々と腹の下で湧き上がる感情をどこかしら感じていた。
まだ帰んない?
送ってすぐ、僕は目の前のトーク画面に自分の感情を投げやりにぶつけているような文章に少なからず後悔した。
何やってんだろ。らしくないなー。
だけどもう自分の興味の中心はそれだけで、何分でも何時間でもそのトーク画面を見つめられるような気がした。
既読がついたのはそう遅くはなかった。
送ってからちょうど10分後、その自暴自棄な僕のメッセージの左下に既読のマークがつく。
まだかかるかな
先休んでていいからね
遅くなんなら迎えにいく。どこ?
数秒もしないうちに既読がついたというのに、それから10分経っても返信は来なかった。
僕はAのためなら何時間だって時間を割いてあげられるけど、Aはそうじゃない。
僕のメッセージは後回しだっていいんだ。だって僕は、Aの本当の彼氏じゃないから。
「………はァーー。」
広い1LDKのフローリングに自分のため息が落ちる。
どす黒い想いが胸中で渦になりながら僕を刺激する。
ああそうだ。君は高校の時からやっぱり変わってない。
誰かに想いを委ねるふりして、本当に振り回してるのは君の方だ。
それで僕がどれだけ他の男に嫉妬したか。
今だってそうじゃないか。
そうやって君はまた僕を寂しくさせればいいんだろ。それで満足だろ。
Aは1時を過ぎても、帰って来なかった。
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花帆 - 両者の視点で本心が読めるのも面白いです♪続き楽しみにしています! (2022年9月28日 2時) (レス) @page28 id: 8832d32b96 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - yukinoさん» yukino様、作者の様々な作品に目を通して頂き大変うれしい限りです。yukino様から頂いたコメント、全て拝見しております。いつも励みになるコメント、ありがとうございます! これからもどうぞご支援頂けると幸いです。 (2022年1月20日 5時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
yukino(プロフ) - 私呪術廻戦では五条悟が一番好きなんですよ!(知るか) 読んでて,とても面白いです!!!続き気になります!頑張って下さい!! (2022年1月17日 20時) (レス) @page18 id: b465ac1425 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 董香さん» 董香様、コメントありがとうございます!嬉しいお言葉、励みになります!(^^)これからも頑張れます! (2021年5月31日 16時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
董香(プロフ) - はじめまして!こんにちは! 読んでてすごくおもしろいです!!!これからも楽しみにしてます (^^) (2021年5月30日 13時) (レス) id: cdc6ebec75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2021年5月29日 15時