01-善人はなかなかいない ページ1
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久しぶり。会いたいな。
もう10年以上顔を合わせていない高校の時の同級生からの久々の連絡は、たった一言、それだけだった。
高校卒業からずっと連絡を取っていないといえば嘘になる。
時たま、お互い気まぐれにどちらからともなく連絡を送る事はあった。
だけど僕が「会おうよ」といえば、彼女はいつもやんわりと断った。
会いたいと思っているのは、僕だけか。
高校2年で知り合ってから、思えば僕は彼女に勝てたためしが一度もなかった。
勉強も、友達も、告白された人数も。
それから、そんな彼女に、僕は惚れてしまったことも。
「ほんと……気まぐれだなぁ。僕以上に」
屋上で一人この連絡を受けた僕の口から、無意識にそんな言葉が吐かれていた。
でも、彼女から初めて、ようやく、僕が10年間密かに一番言われたかった言葉をもらえた。
その事が何よりうれしくて仕方がない。
いいよ
なんて素っ気ない返事を送って、それから昼を終わらせる予鈴がなるまで、ずっと画面を睨み続けていた。
結局、授業が始まるチャイムが鳴っても、既読が付くことはなかった。
__待ち合わせの場所。
10年も会っていないうちに、僕はいつの間にか思い出の中の彼女を美化しすぎているのではないかと少し怖くなった。
彼女を、すぐに見つけた。
そんな杞憂は、むしろ逆だった。
「__五条くん!」
もし100人にどんな人が美人かと聞かれれば、100通りの答えが返ってくるかもしれない。
彼女は、その100通り全てを十全に併せ持ったような美人だ。
もう何年も会っていない彼女は、ますます綺麗になっていた。
「やっほー、久しぶりじゃん。
元気してた?」
「そうだね。五条くん、全然変わらないからすぐわかっちゃった」
「えー嘘。変わったでしょ。Aは変わんないけど」
案外、久々に会った究極の美人と会っても緊張することなく話せるもんだな。
多分それはイケメンな僕だからこそだと思うけど。
「じゃ、ちょっと話そっか」と僕の長い脚を抑制して彼女の歩幅に合わせて歩いてあげる。
微笑む彼女を、僕の隣に歩かせるというのは存外優越感に浸れて気分が良い。
「五条くん」
「ん−?」
「……嘘だよ。五条くんは変わった」
「ますます格好良くなった」
言いつつ僕を抜かしてカフェの扉を開ける彼女に、また僕はしてやられた。
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花帆 - 両者の視点で本心が読めるのも面白いです♪続き楽しみにしています! (2022年9月28日 2時) (レス) @page28 id: 8832d32b96 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - yukinoさん» yukino様、作者の様々な作品に目を通して頂き大変うれしい限りです。yukino様から頂いたコメント、全て拝見しております。いつも励みになるコメント、ありがとうございます! これからもどうぞご支援頂けると幸いです。 (2022年1月20日 5時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
yukino(プロフ) - 私呪術廻戦では五条悟が一番好きなんですよ!(知るか) 読んでて,とても面白いです!!!続き気になります!頑張って下さい!! (2022年1月17日 20時) (レス) @page18 id: b465ac1425 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 董香さん» 董香様、コメントありがとうございます!嬉しいお言葉、励みになります!(^^)これからも頑張れます! (2021年5月31日 16時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
董香(プロフ) - はじめまして!こんにちは! 読んでてすごくおもしろいです!!!これからも楽しみにしてます (^^) (2021年5月30日 13時) (レス) id: cdc6ebec75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2021年5月29日 15時