２７２度 ページ21
そこは深海のように光は届かないところ。光さえも飲み飲むような真っ暗な部屋の中で、ぴちょん。ぴちょん。と水の滴る音が聞こえる。
見たことがある、この景色。
Aはぼんやりとそんなことを思った。
そして暗闇の中、うっすらと筒状の大きな水槽が見えた。ぴちょん。ぴちょん。水の滴る音がだんだんと大きく聞こえる。そしてその水槽の中に一人の人の影。眠っているようだった。Aはその水槽に手をつく。
だれ？あなたはだれ？
水槽の中でその人物は俯いたまま。Aは顔が見たくて水槽顔を近づける。それでも水槽の中では、紫色の短い髪が水の中で揺れているだけだった。
知ってる。知ってる人だ。
Aの中で、ザワザワと何かがひしめくのを感じた。突如、どう仕様もない程の空虚感が襲う。地と天がひっくり返ったような感覚が襲い。暗闇の中に浮かぶ水槽が遠ざかっていく。「いかないで」と叫んでも届かなかった。そして何も分からなくなった。
ゆっくりと浮上する意識にAは瞳をあけた。まずはじめに飛び込んできたのは高い天井に天蓋付きのキングサイズを優に超える大きなベットだった。その中心に寝かされているAは、ズキズキと痛む頭に顔をしかめた。
「ここは…」
「起きたか。」
突如声をかけられてAはビクリッと肩を揺らした。急いで声のした方へ顔を向けると、高級感漂う大理石の床に大きな机。そして黒塗りの椅子に、男が腰掛けていた。
「だれ？」
Aは怪訝そうな顔で声かけてきた男を見た。パーカーのフードを目深にかぶり、しかし口元には笑みを浮かべる見るからに怪しげな男。そして男は楽しそうに言った。
「俺の名はジェラール。この楽園の塔の…支配者とでも言っておくか？」
「楽園の塔っ…！！」
Aは息を呑みジェラールとかいう男を睨みつける。
「あなた…この塔がどれだけ危険なものか、分かっているの？」
「危険？それはお前が言えた義理か、人柱のA。」
Aは黙り込む。別に言い返せないわけではない。ただなんとなく的をかすっていて、そしてなんとなく違和感を感じたからだ。こういうときは、何も言うべきじゃない。
「オレは黒魔道士ゼレフを復活させる！」
なるほど、ゼレフの妄信者か。Aは何も言わかなかった。
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海姫(プロフ) - オーマイダティーさん» うおおお...、とんでもなく嬉しいです！！ (2015年4月10日 22時) (
レス) id: b9de7aef37 (このIDを非表示/違反報告)
オーマイダティー - とんでもなく、面白かったです!! (2015年4月10日 22時) (レス) id: 69b5cf62fa (このIDを非表示/違反報告)
海姫(プロフ) - M-Aさん» ありがとうございます！続編に行くのでそこでもよろしくお願いしますね！！ (2014年11月3日 20時) (レス) id: ab7ccb80bb (このIDを非表示/違反報告)
M-A - わかりました！^_^ (2014年11月3日 17時) (レス) id: 520045c3f9 (このIDを非表示/違反報告)
海姫(プロフ) - M-Aさん» そんな！褒め過ぎですよ！！(照れまくり)もうすぐオリジナル始まるので、そっちも見てくださいね！ (2014年11月2日 22時) (レス) id: ab7ccb80bb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海姫 | 作成日時：2014年9月30日 22時
