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自惚れロマンチカ ページ38

『好きだ。』


そう伝えた直後のAの言葉を聴きたくなくて、無理矢理唇を重ねた。その時の唇の柔らかさや熱さは気持ちを高揚させ、より深く、より長くこうしていたいと思わせた。Aの唇の間から漏れる吐息が非常に色目かしい。
どのくらいそうしていたのか。長かったようにも思えたし、短かったようにも思えた。
名残惜しく唇を離した時のAの表情は、正しく女の表情で酷く官能的で、それは毒にも似たものだった。


そこから先のことは中也は覚えていない。気がついたらもう朝で、家の椅子で寝ていた。周りに落ちた酒瓶とつまみにやけ酒をしたのだろうと辟易した。
そんな重苦しい気持ちのまま電子機器を操作して、一息ついたところで中也はため息をついて項垂れた。どうしてあんなことしてしまったのだろうかと強く後悔していた。


「……Aが悪ぃ。」


小さく呟いた。
何時もそうだった。Aという人間はここに居るのに、何時も線引きをしているようだった。いつも暖かく受け入れてくれるのにいざというとき、気が付かないくらいにやんわりと押し返されるような、躱される。それはマフィアと探偵社員だとか、そういった線引きではない。
理由は何となく分かる。恐らくAが異世界から来たからなのだろう。
だがそれは谷川のときに解決したはずだ。
もうAを強制的に元の世界に引き連れるものなど何も無いというのに。まるで何時離れ離れになるかも分からないようなAの態度に憤慨した。
だから抑えられなかった。自分如きがAを引き留められる存在になれるだなんて思っていない。返事を期待しているわけではない。
だが、もしなれたなら、と。思わないわけではないのだ。
もし、なれたなら。それはもう中也にとってはこれ以上ない極上の倖せなのだろう。

中也は想像する。
疲れた顔で引き摺られるように家に帰る。重い鞄を下ろして『ただいま。』と呟く。その時小走りする足音が奥から聞こえてくる。心做しかいい香りもする。
そして自分が贈ったエプロンをしてAが現れ、柔らかく、そして無邪気に笑いかけ云う。『おかえりなさい。』と。そして少し顔を赤らめて俯き、恥ずかしそうにして言葉を続ける。『ご飯にしますか?お風呂にしますか?それとも、』Aは上目遣いで中也を見る。その表情は色っぽい。


「あぁ〜〜〜。」


そんなことになったら、本当に倖せだ。死んでもいい、と中也は心の底から思った。


****

まだ酒が残ってる中原氏。

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海姫(プロフ) - 神夜さん» コメントありがとうございます!本名と一緒とか…、運命感じます(笑)。ってか可愛い名前ですね。羨ましいです! (2019年1月24日 9時) (レス) id: fe69d25c5e (このIDを非表示/違反報告)
神夜(プロフ) - 海姫っていう名前が私の本名と同じで思わず2度見してしまい気になったので見てみた所とても面白かったです!更新頑張ってください (2019年1月22日 0時) (レス) id: 1c640baa7c (このIDを非表示/違反報告)
海姫(プロフ) - 雪豹さん» コメントありがとうございます〜。正直原作沿かなり自信ないんですけどか頑張ります! (2018年12月28日 20時) (レス) id: fe69d25c5e (このIDを非表示/違反報告)
雪豹(プロフ) - 続編、良いですね!楽しく更新を御待ちしておりますm(_ _)m  (2018年12月24日 13時) (レス) id: 5c79542a8a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:海姫 | 作成日時:2018年12月23日 21時

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