なんちゃって恋愛教室 ページ37
「僕は話を聴き、思ったことを告げることは出来るが、人を導く事は出来ぬ。」
「…はい。」
「最終的には自分で決めろ。」
Aは頷く。
何時だってそうだった。悩みの相談とは話を聴き、選択肢を狭めているあげることは出来ても、最終的な結論は本人にしか出せない。相当な偉人や非凡な人間なら別なのだろうが、Aはそうではない。
だから芥川の云いたいことはよく分かった。
「…本当は正しい結論を持っているんだと思います。上手く伝えられないだけで。」
中也は何時でも優しかった。
彼は初めてあった時『優しさとは無縁の男だ、』と云ったが、確かにAに向けるものは優しさだった。それはとても儚いもので。
吐息にすらかき消されるようなものでなければ、体温にすら溶けてしまうようなものでなければ、誰も優しさなんか好きになれない。
優しさの後に来るのは暖かな温もり。それは心地良いものだが、止まない雨などないように、雨が降らない空などない。
温もりの後の一人の時間にはいつもより生命の腐ったような孤独を感じる。
だから今まで優しさを好きにはなれなかった。だが中也だけでなく皆が与える優しさをいつか好きになっていて、優しさを返したいと思うようになった。そうやって人の輪が広がっていくのをAは知っている。
だからこそ、Aは自分の選択を見つけ、自分の口から中也に伝えなくてはならない。
たとえ恋人になろうとも、ならないとしても、関係が壊れてしまったとしても。中也に与えられた優しさを忘れることは無い。
Aが顔を上げると芥川は何も云わずにこちらを見ていた。真っ黒な瞳の中に、僅かに温もりを感じた。
「…芥川さんは、優しいですね。」
「……Aはいつも不思議なことを云う。」
「私の思ったことをお伝えしただけですよ。」
柔らかく笑ったAを見て、芥川は内心ホッとしていた。
いつも柔らかく笑っているAが、今日街で会ったとき、今にも泣きそうに眉を八の字にして、耐えるように体を強ばらせていた。それを見た瞬間、体験したこともない感情が湧き上がり、胸がざわめいた。
話を聞いたときは少し驚いたが、話をして少しは気が楽になったようで安堵した。
この恋路を邪魔するつもりはない。かといって応援するつもりもない。
Aが選べばいいと思った。初めて会ったときの柔和な微笑みがいつまでも続いてくれるのなら、Aが望む道を選んで欲しいと、芥川は思うのだった。
ラッキーアイテム
名探偵のメガネ
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海姫(プロフ) - 神夜さん» コメントありがとうございます！本名と一緒とか…、運命感じます(笑)。ってか可愛い名前ですね。羨ましいです！ (2019年1月24日 9時) (
レス) id: fe69d25c5e (このIDを非表示/違反報告)
神夜(プロフ) - 海姫っていう名前が私の本名と同じで思わず2度見してしまい気になったので見てみた所とても面白かったです！更新頑張ってください (2019年1月22日 0時) (レス) id: 1c640baa7c (このIDを非表示/違反報告)
海姫(プロフ) - 雪豹さん» コメントありがとうございます〜。正直原作沿かなり自信ないんですけどか頑張ります！ (2018年12月28日 20時) (レス) id: fe69d25c5e (このIDを非表示/違反報告)
雪豹(プロフ) - 続編、良いですね！楽しく更新を御待ちしておりますm(_ _)m (2018年12月24日 13時) (レス) id: 5c79542a8a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海姫 | 作成日時：2018年12月23日 21時
