空から落ちた薄倖美人の倖せ ページ44
異能力《空が分裂する。》
途端に青白い光がAを包む。それは何も感覚を伝えなかった身体に、微かに、そして確かに暖かな温もりを感じた。Aは驚いて目を見開く。そこには少しほっとしたような表情の乱歩がいた。
「乱歩さ、」
「大丈夫。ここにいる。」
乱歩の言葉にAは目をぱちくりさせた。何度も見覚えのある異能だった。それが自分を中心に発動されていたのだ。
そして驚いている間に次第に体が動く様になる。自分の手を見つめ、握ったり、離したりを何度も繰り返す。そして足を少しだけ動かしてみる。常人と変わらず感覚を感じる。意識もはっきりする。
Aの頬に残っていた涙が一筋流れる。
「乱歩さん、私…。」
「何も質問するな!
これでも結構僕も焦ってたんだ。その仕返しだよ。」
その時、騒ぎ声と足音が聞こえる。何事かと扉を見た瞬間、荒々しく扉が開けられる。
「A!!」
「Aちゃん!!」
夜明けの薄ら白い光の中、みんなの影。そして太宰を筆頭に鏡花や敦、与謝野やナオミ達さえも「良かった!」と声を上げ、Aに抱きつく。
Aは吃驚して目を見開き乱歩を見る。乱歩はやれやれといったふうにため息をついた。
「Aは入社試験はすでにパスしていた。だけど本人が入社を拒んでいたから、社員として認めることが出来なかったんだよ。
でも、さっきちゃんと自分で望んだだろ?」
『ちゃんと探偵社に、入社したかったなぁ。』
先程呟いた言葉が思い起こされる。
つまりあの言葉をきっかけに福澤の保護下に来たということだ。ということは、だ社長異能力の《人上不人造》でAの異能が自分で扱えるようになったということだ。
乱歩曰く、谷川の異能がきちんと発動しなかった(保護内に来なかったり、体調不良が治らなかったりした)のはAの既に持っている異能と谷川の異能が絡まってしまっていたからだという。
今はAの力でこの世界に存在しているということらしい。
乱歩の説明にAは首を傾げる。
「なんだかよく解らないですけど、私って…。」
「世界に祝福されたってことだよ。」
乱歩の言葉は、じんわりとAの胸に響いた。そして再び涙がポロポロと零れる。
「Aさん、おかえりなさい!!」
誰かがAにそう云った。誰の声なのかは解らない。だがAはその言葉に大粒の涙を流しながら「ただいま!」と涙声で笑って云った。
-END-
海姫から→←海姫から(dead apple感想ネタバレ含む)
589人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みるく(プロフ) - この小説はすごく美しく綺麗だなと思って、とても気に入っています!!!儚く美しい世界観というかなんというのか、語彙力がないですが、ものすごくいい作品でした!読ませていただきなんども涙を流しました!素晴らしい小説を作って下さりありがとうございますm(*_ _)m (2022年3月13日 9時) (レス) @page45 id: a995b7f6e9 (このIDを非表示/違反報告)
海姫(プロフ) - 焔蘭さん» コメントありがとうございます。タイトルは夢主が文ストの世界に来た時、ビルから飛び降り落ちたので《空から落ちた》と入れて、幸せとは遠い子が人との繋がりで幸せになっていくので《薄倖美人》としています!後は夢主の異能が《空が分裂する》だというのもあります! (2019年1月13日 19時) (レス) id: fe69d25c5e (このIDを非表示/違反報告)
焔蘭 - 初めましてで失礼します!タイトルの意味って何かあるんですか?そしてこれからも頑張ってください! (2019年1月13日 16時) (レス) id: 98975d3783 (このIDを非表示/違反報告)
海姫(プロフ) - 乱歩ルート期待の敦くんの妹さん» コメントありがとうございます!乱歩さん…。乱歩の夢希望ですか? 良かったら書きますので聞きますよ! (2018年5月29日 12時) (レス) id: fe69d25c5e (このIDを非表示/違反報告)
乱歩ルート期待の敦くんの妹 - 乱歩さん乱歩さん乱歩さん(ぶつぶつ (2018年5月29日 0時) (レス) id: 4a14a6da47 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:海姫 | 作成日時:2017年8月6日 0時