お別れの予感。 ページ4
「そんなこ、」
Aの言葉が不自然に止まる。
ゆっくりとAを見ると胸を強く抑えて床に蹲っていた。その姿に探偵社員は全員サッと顔を青させてAに駆け寄った。
ごぼっ、と凡そ人間の口から出る音ではない音と共にAは拳を強く握り脂汗を浮かべてその場に倒れ込む。その口から零れた大量の血液が床に広がる。瞳は黒く憂鬱で虚ろだ。
ナオミが悲鳴に似た声で与謝野を呼ぶ。
「くくくっ。
A、貴女はつくづく憐れですね。」
谷川は笑い乍ら云った。その言葉に即座に反応し国木田達はAを谷川から庇うように立つ。
殺気立って警戒心を剥き出しにする国木田達に谷川は肩を竦める。
「君、谷川だったね。
Aがこっちで生きていける方法を知っているね? 」
黙ってた乱歩がAの背中を擦り乍ら厳格な声音で聞く。初めて見る乱歩の殺気立った姿に皆息を呑む。
そんな乱歩を見て谷川は面白そうに笑うと「さあね、知らなーい。」と明るく答えた。そんな谷川に社内に殺気の渦が広がる。
それにまた谷川は小さく笑った。Aの突然の発作に焦っている探偵社員が可笑しくて堪らない、といった様子だった。
谷川は社員を見渡す。その時不意に太宰が谷川と目が合った。
「貴方、太宰君ですね? 」
「だから? 」
絶対零度の声音で太宰が云う。その表情は落ち着いていながらも目は笑っていない。黒曜石の何処までも闇に染まった黒の瞳が怒りに燃えていた。睨みと殺気で人を殺しそうな勢いの太宰に谷川は「怖い怖い。」と肩を竦める。
「まるでマフィアの幹部を相手にしているようです。」
その言葉に太宰のみならず、探偵社員全員が反応し、より警戒心を強める。
谷川は呆れたように笑ってから太宰に何か小さなものを投げた。太宰はそれを受け止め、直ぐに手を開くと小さな薬が袋に入れられていた。
「それはAの発作を一時的に止めるものです。」
「何処にそんな確証が? 」
「ありません。
なので疑うならAに与えなければ良いだけの話です。」
谷川はそう云う。
その言葉に太宰は黙って谷川を睨む。谷川は相変わらず口元に余裕の笑みを浮かべていた。
「一つだけ、云っておきます。
Aは渡さない。僕のだ。」
谷川そう表情を消して云うと輪郭を滲ませね黒い渦に姿を変えてその場に消えた。
皆の脳裏に残るのは谷川の瞳に狂気に染まった瞳だった。
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みるく(プロフ) - この小説はすごく美しく綺麗だなと思って、とても気に入っています!!!儚く美しい世界観というかなんというのか、語彙力がないですが、ものすごくいい作品でした!読ませていただきなんども涙を流しました!素晴らしい小説を作って下さりありがとうございますm(*_ _)m (2022年3月13日 9時) (レス) @page45 id: a995b7f6e9 (このIDを非表示/違反報告)
海姫(プロフ) - 焔蘭さん» コメントありがとうございます。タイトルは夢主が文ストの世界に来た時、ビルから飛び降り落ちたので《空から落ちた》と入れて、幸せとは遠い子が人との繋がりで幸せになっていくので《薄倖美人》としています!後は夢主の異能が《空が分裂する》だというのもあります! (2019年1月13日 19時) (レス) id: fe69d25c5e (このIDを非表示/違反報告)
焔蘭 - 初めましてで失礼します!タイトルの意味って何かあるんですか?そしてこれからも頑張ってください! (2019年1月13日 16時) (レス) id: 98975d3783 (このIDを非表示/違反報告)
海姫(プロフ) - 乱歩ルート期待の敦くんの妹さん» コメントありがとうございます!乱歩さん…。乱歩の夢希望ですか? 良かったら書きますので聞きますよ! (2018年5月29日 12時) (レス) id: fe69d25c5e (このIDを非表示/違反報告)
乱歩ルート期待の敦くんの妹 - 乱歩さん乱歩さん乱歩さん(ぶつぶつ (2018年5月29日 0時) (レス) id: 4a14a6da47 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海姫 | 作成日時:2017年8月6日 0時